コラム

「かわいさを飛び越えた」犬や猫の写真に込められた意味

2018年03月16日(金)20時57分

From Cheryl Senter @tea_journals

<日本でも他の国でも動物の写真といえば「可愛い系」が大半だが、その中で異彩を放つインスタグラム・ギャラリーがある>

日本はもちろん他の国でも、動物を扱ったインスタグラムの写真には「可愛い系」が非常に多い。そんな中で異彩を放つ、ドキュメンタリーやアーティスティックな面を押し出したインスタグラム・ギャラリーがある。

アメリカのニューイングランド地方に住む写真家、シェリル・センターによってキュレーションされている「tea_journals」である。

2013年から始まった。センター自身、それ以前は、猫や犬を中心とするような動物写真がドキュメンタリー的な作品になるとは考えていなかった。写真家仲間が動物の写真を見事なフォトジャーナリズムのスタイルでインスタグラムに載せたのを見て、彼女もこう決意したという――写真の力を使って、動物たちの現実にインスタグラムを通して光を当てよう。

コンセプトは、話すことができない生き物に対する人間の慈悲心を呼び覚ますことだ。ギャラリーのタイトル「tea_journals」にあるteaは、Trained Eyes on Animalsの略。そうした動物たちの現実に寄り添っている、という意味である。

とはいえ、アメリカなどで今流行りのお涙頂戴的な(あるいは「虐待された動物たちを前面に押し出した」と言ってもいい)写真/ビデオのギャラリーではない。どちらかといえば、乾いた日常の中のドキュメンタリータッチである。

基準もある。基本は動物と人間のあいだのドキュメンタリーだ。人間を楽しませるために動物同士を戦わせている写真はポストしない。また、「いいね!」を狙って意図的に怪我させられた動物の写真も投稿しないという。たとえ意図的でなく別の理由で虐待された動物の写真を載せることがあったとしても、細心の注意を払う。

ときには、典型的な「可愛い系」の動物の写真を載せることもある。正統派のドキュメンタリーに慣れていない閲覧者たちを誘い込むためだ。ただし、動物園で撮られた写真をポストすることはほとんどないらしい。人間を楽しませるために動物を檻の中に入れるべきではない、という考えからである。

プロフィール

Q.サカマキ

写真家/ジャーナリスト。
1986年よりニューヨーク在住。80年代は主にアメリカの社会問題を、90年代前半からは精力的に世界各地の紛争地を取材。作品はタイム誌、ニューズウィーク誌を含む各国のメディアやアートギャラリー、美術館で発表され、世界報道写真賞や米海外特派員クラブ「オリヴィエール・リボット賞」など多数の国際的な賞を受賞。コロンビア大学院国際関係学修士修了。写真集に『戦争——WAR DNA』(小学館)、"Tompkins Square Park"(powerHouse Books)など。フォトエージェンシー、リダックス所属。
インスタグラムは@qsakamaki(フォロワー数約9万人)
http://www.qsakamaki.com

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