コラム

いよいよ始まるトランプvsバイデンの討論会はここに注目せよ

2020年09月29日(火)11時00分

いよいよ大統領選の第1ラウンドが始まる REUTERS/Kevin Lamarque/Leah Millis

<「政界のスーパーボウル」テレビ討論会は第1回が最重要。2人の候補者が持つ強みと弱みとは>

米大統領候補の公開討論会に大した意味はないと、政治学者はほぼ口をそろえて断じる。彼らはおそらく、有権者がある候補に投票する理由を正確に見定める方法は存在しない、という事実を理解できないのだ。

有権者にとって、自身の選択をはっきりと説明するのは難しい。外交政策がより賢明だからと言いつつ、心の中では「大統領らしかったのは彼だ」と考えていたりする。

結論を言えば、討論会は各党の大統領候補が同じ立場で、直接対決するさまを目撃する唯一の機会にほかならない。研究結果はどうであれ、極めて重要なものだ。来るべき「政界のスーパーボウル」の行方について、いくつか予想してみよう。

20200929issue_cover200.jpg

9月29日に予定される第1回討論会は最も決定的なものになるだろう。聴衆が多く、残り2回の討論会のムードがここで決まる。初回を制した者が討論会全体の勝者になるはずだ。

歴史的にみれば、第1回討論会ではほとんどの場合、挑戦者の立場にある候補が再選を目指す現職大統領を打ち負かす。挑戦者は通常、予備選を勝ち抜いたばかりで調子は万全だ。

一方、現職大統領はだれた自己満足状態で第1回討論会に臨む。最も有名な例が、現職大統領バラク・オバマがミット・ロムニーの挑戦を受けた2012年だ。オバマは事前の練習をさぼり、討論会ではロムニーが主役になった。トランプ大統領が練習するはずはなく、予備選での討論やトランプ相手のシミュレーションを繰り返してきた民主党候補のジョー・バイデン前副大統領は、既にボクシングのチャンピオン選手並みに仕上がっている。有利なのはバイデンだ。

勝敗を印象付ける上では、討論会後のメディア対策が重要になる。12年の第1回討論会では両者に圧倒的な違いはなかったが、ソーシャルメディアによってオバマのダメダメぶりが増幅された。今回、オンラインでのトランプの影響力はずっと大きく、保守派ラジオ局などの基盤もより大きい。この点、有利なのはトランプだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story