最新記事

ビジネス

あの「80対20の法則」が90対10、99対1になる時代へ

2018年10月24日(水)18時35分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Duncan_Andison-iStock.

<「80対20の法則」の本が世に出て20年。36の言語に翻訳され、数百万人に読まれてきたロングセラーだが、このたび「増補リニューアル版」が刊行された。時代は変わったが、法則はどう変わったか>

「利益の80%は顧客の20%がもたらす」「仕事の成果の80%は、費やした時間の20%から生まれる」――これが世界の"真理"だという。この「80対20の法則」(あるいは「パレートの法則」とも)について、聞いたことがある人は多いだろう。

何しろ、起業家、投資家、経営コンサルタントであるリチャード・コッチによる『人生を変える80対20の法則』の初版が刊行されてから、既に20年の月日が流れている。この間、36の言語に翻訳され、世界で数百万人に読まれてきた。この法則を人生やビジネスに応用し、成功を手にするためのいわば手引書だ。

これまでも『新版 人生を変える80対20の法則』が出版されるなど、時代に合わせた改訂がなされてきたが、このたび、20周年を記念した『増補リニューアル版 人生を変える80対20の法則』(リチャード・コッチ著、仁平和夫・高遠裕子翻訳、CCCメディアハウス)が刊行された。インターネットやSNSの勃興により、世界は大きくその姿を変えているが、今でもその真理は「80対20」なのだろうか。

「最小限の努力で最大限の成果を上げる!」と謳う世界的ロングセラーだが、著者のコッチによれば、この法則が通用しない時代になったということは全くない。むしろ「80対20の法則は進化している」というのだ。コッチはこう書く。

「過去100年で認識されるようになった80対20のパターンは、70対30から90対10まで幅はあるが、驚くほど一貫性があった。だが最近では、90対10、さらには99対1への移行が急速に進んでいる」

全20章から成るこの増補リニューアル版は、「80対20の法則」の概観から始まるが、うち4章は新たに加えられたもの。ここでは本書から一部を抜粋し、3回にわたって掲載する。まずは増補箇所の説明を含む「二〇周年記念版への序文」から。

◇ ◇ ◇

八〇対二〇の法則は進化している――この本だけでなく、法則自体が。この二、三〇年で、ビジネスも、社会も、個人の生活も、信じられないほど大きく変わった。そして、八〇対二〇の法則がどんな仕組みなのか、なぜこの法則が有効なのかについての理解も変わってきた。それが、この版で付け加える必要があった点である。

八〇対二〇の法則は、かつてないほどあちこちで目につくようになった。そしてその重要性を増している。以前はこの法則を活用した人が圧倒的に有利になったが、今後は基本的なツール、成功や幸福を望む人には欠かせないツールになるだろう。

そもそも、この二、三〇年に何が起きたのか。要約すると、三つのことが起きた。

(1)少なくとも成長力と収益力で、トップダウン型の大企業がネットワーク型企業に敗れた。アップルやグーグル、フェイスブック、ウーバー、アマゾン、イーベイ、ベットフェアといったネットワーク型新興企業の成長が著しい。こうしたネットワーク型企業が社会を席巻しつつあるため、八〇対二〇現象が至るところで目立つようになっている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中