最新記事

日本企業

日産・西川社長退任、社外取締役らがガバナンス不全を警戒しての逆転劇

2019年9月11日(水)18時45分

日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(写真)の辞任劇の背景には、取締役会のガバナンス(企業統治)不全に対する、社外取締役らの強い警戒感があった。横浜の日産本社で7月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

日産自動車の西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)の辞任劇の背景には、取締役会のガバナンス(企業統治)不全に対する、社外取締役らの強い警戒感があった。今後の焦点は後任選びへと移るが、短期間で相次いだトップ交代劇に、市場の見方は一段と厳しくなっている。

西川社長、即時辞任に抵抗

9日の取締役会は午後3時、日産本社で始まった。複数の関係者によると、午後6時ごろには議題がカルロス・ゴーン被告らの不正に関する最終調査報告から、株価に連動した報酬制度(SAR)における報酬水増し問題を踏まえた「西川社長の進退」に移った。当事者である西川氏はいったん退席させられ、議論が続けられた。

西川氏のSARを通じた行為は社内規定違反ではあるものの、法律違反でなく不正の意図もなかったことから、即時辞任には当初、複数の社外取締役が否定的だった。

ところが、「ガバナンスの観点」から、一部の社外取締役が即時辞任を提案すると、これに山内康裕最高執行責任者(COO)、外国人の社外取締役、仏ルノーのジャンドミニク・スナール会長らが賛同した。ガバナンス改革を進める上で問題をうやむやにすべきではないとの意見が強まり、最終的には取締役会として辞任を要請することでまとまった。

再び入室を許され、即時の辞任を求められた西川社長は当初、抵抗した。昨年11月に逮捕されたカルロス・ゴーン前会長の不正を防げなかった責任から、いずれ辞任するとの意向を周囲に伝えてはいたものの、後継者選びを見届けて「日産を元の軌道に戻す」との意向が強く、不正報酬問題を議論した今回の取締役会のタイミングでの辞任は想定していなかったためだ。

それでも取締役会から、不正報酬の問題だけでなく、ゴーン被告らの不正を見逃した責任を含めた辞任であることなどの説明を受け、最終的に辞任の要請を受け入れた。

西川社長の辞任劇は、いわば社外取締役の主導で進んだ。日本企業のコーポレートガバナンス強化を進める政府は、こうした動きを前向きに受け止めた。

世耕弘成経済産業相は10日、西川社長の辞任について「コーポレートガバナンスがしっかりと機能している証左だ」と評価した。日産のコーポレートガバナンス整備に経産省も関与してきたと説明。ガバナンスを整備するという路線により、「少数株主の権利を守る議論になり、ルノーによる経営統合も現時点で成り立っていない」と述べた。 

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 6

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中