最新記事

金融

JPモルガン・チェースのダイモンCEO、破綻した銀行救済に復帰 ファースト・リパブリック銀行と連邦預金保険公社も救う

2023年5月2日(火)15時31分
米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモンCEO

米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が、経営破綻した銀行の救済を巡る波乱の舞台の主役として戻ってきた。2018年11月、パリで撮影(2023年 ロイター/Benoit Tessier)

米銀最大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)が、経営破綻した銀行の救済を巡る波乱の舞台の主役として戻ってきた。

15年前にベアー・スターンズの買収で苦い思いを味わったダイモン氏はその後、もう救済にはかかわらないと発言していた。ところが1日朝、中堅銀行ファースト・リパブリック銀行を連邦預金保険公社(FDIC)の管理下から引き取ると表明したのだ。

これで当面、納税者にかかる重圧は和らぐし、取引条件面からすればJPモルガン株主にもプラスに働くのは間違いない。だが破綻銀行について、「大き過ぎてつぶせない」という危険な発想をさらに定着させない形でどうやって処理すべきか、米当局が有効な手だてを持ち合わせていないことも改めて浮き彫りとなった。

好条件での取引

JPモルガンにとって今回は非常に有利な取引と言える。ファースト銀の2290億ドル弱の資産と約1730億ドルのローンを実勢評価額よりおよそ13%低い価格で取得できるからだ。税金とFDICへの1060億ドルを支払った後、統合費用を計上する前の段階でJPモルガンは26億ドルの利益を確保できる。資本バッファーに対する悪影響も想定していない。

FDICはダイモン氏の支援を得るために、幾つかの好条件も提示した。ファースト銀のローンポートフォリオの大部分について損失の最大8割の負担を申し出たほか、500億ドルの固定金利タームローンも提供する。

通常の環境であれば、JPモルガンがファースト銀を買収するのは認められなかっただろう。まして幾つかの公的な支援措置付きなどもっとあり得ない。全米の預金残高の少なくとも10%を保有する銀行は買収を通じてそれ以上預金を拡大するのは許されないからだ。JPモルガンも昨年末時点で、この上限を超えていた。

それが今回、買収のお墨付きをもらったことでJPモルガンとダイモン氏は一層強大な存在になる。シティグループのジェーン・フレーザーCEOやバンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEO、PNCファイナンシャル・サービシズのビル・デムチャックCEOといった面々は、業界最大手行がさらに巨大化するのを座視するしかない。


【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ軍事訓練員派遣の予定ない=軍制服組ト

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、FRB当局者は利下げに慎

ビジネス

米国株式市場=ナスダック最高値、エヌビディア決算控

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中