最新記事

インタビュー

「肩書のない人になりたい」はあちゅうの原点となった1冊

2019年1月9日(水)11時20分
今井順梨

Newsweek Japan

<AV男優のしみけん氏と結婚した、ブロガー・作家の「はあちゅう」氏。8年前に即買いした『20歳のときに知っておきたかったこと』の魅力から、「自分は傷つきやすい」と言いながらも炎上に負けない「発信する勇気」まで、SNS時代の寵児に聞いた>

人気ブロガーとして注目された大学生時代に、25社もの企業から出資・タイアップを獲得して「タダで世界一周旅行」を実現。卒業後は電通でコピーライターとなり、現在は独立してブロガー・作家として自身の言葉を人々に届けている。

日本のウェブ業界で、知らない者はいないであろう「はあちゅう」さんだ。ツイッターで21万人、インスタグラムでも6万人以上のフォロワーを持つ。最近はAV男優のしみけんさんとの結婚生活を描いたブログ「旦那観察日記」が話題で、1日に200万PV(ページビュー)以上のアクセスを誇る人気コンテンツとなっている。

常に多くの人を惹きつけ、驚かせるような発信を続けてきた人物だが、そんな彼女には "原点の1つ"とも言える1冊の本がある。『20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』(CCCメディアハウス)だ。

スタンフォード大学工学部教授であり、同大学のテクノロジー・ベンチャーズ・プログラムのエグゼクティブ・ディレクターを務めるティナ・シーリグ氏が、20歳を迎える自身の息子のためにまとめた本だ。現在、累計30万部。シーリグ教授のコースは全米の起業家育成コースの中でもトップクラスの評価を得ているが、この本にはまさに成功へと導く起業家精神のエッセンスが詰まっている。

邦訳版が2010年に発行されたときには20歳を越えていたものの、書店で見かけて即買いしたというはあちゅうさんに、同書の魅力や「発信する勇気」について聞いた。

世の中の価値に合わせずに考えることで、新しい価値は生まれる


スタンフォード大学の集中講義ってどんなことを教えてるんだろう? という純粋な興味と、タイトル(書名)、そして遥かなる感情を彷彿させる表紙がステキで。吸い込まれるような感じで手に取ったのを覚えています。もう直感で選びました。

24歳だったはあちゅうさんは当時、自己啓発本などをよく読んでいたが、同書についての予備知識はなく、書店で見かけて引き寄せられたと振り返る。


今も印象に残っているのは第1章の「いま、手元に5ドルあります。2時間でできるだけ増やせと言われたら、みなさんはどうしますか?」という課題について、学生たちが知恵を絞ってさまざまな方法を考え出していく実験です。内容は本を読んでいただければ分かりますが、枠にとらわれずに考えていく力とはどういうものなのかを、とても端的に示したエピソードです。

大学時代に買った「Think outside the box」(「既成概念にとらわれるな」という意味の慣用句)と書かれたポストカードをずっと大切にしているはあちゅうさんにとって、同書の「『決まりきった次のステップ』とは違う一歩を踏み出したとき、すばらしいことは起きる」というメッセージは、世の中の価値に合わせずに生み出したアイデアが新しい価値を生み出すということを知るきっかけになったそうだ。


私は自分で"自分の価格"を決めることをしてきましたが、会社員時代は「世のコピーライターの時間給はこれぐらいだろう」と、相場に合わせる形で仕事をしていました。でもSNSでの発信が仕事になってからは、自分の時間給を自分で決めなくてはならなくて。

つまり、一歩踏み込んでお金について考えなくてはならなくなったのですが、この本を通して「世の中の決まりごとや価値に合わせずに考えることで、新しい価値は生まれるものだ」と思えるようになったことで、臆することなく自分の仕事に価格を付けられるようになりました。

【参考記事】起業家育成のカリスマに学ぶ成功の極意(ティナ・シーリグ インタビュー)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EUと米、ジョージアのスパイ法案非難 現地では抗議

ビジネス

EXCLUSIVE-グレンコア、英アングロへの買収

ワールド

中国軍機14機が中間線越え、中国軍は「実践上陸訓練

ビジネス

EXCLUSIVE-スイスUBS、資産運用業務見直
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中