最新記事

メンタルヘルス

欧米で注目を集める「歩くだけ」心理療法、ウォーキング・セラピーとは何か

2020年3月10日(火)17時55分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

Ljubaphoto-iStock.

<歩くだけなのに、仕事のストレスも、うつ病も、依存症も軽減する効果があるという。ウォーキング・セラピーの第一人者であるイギリスの臨床心理士ジョナサン・ホーバンが指南する>

新型コロナウイルスに世界同時株安と、先行き不透明な中、強いストレスにさらされたり、不安にさいなまれたりしている人もいるかもしれない。

その根本的な解決になるわけではないが、そんなとき、気持ちを和らげるひとつの方法がある。「歩くこと」だ。

ウォーキングやジョギングをすれば、気分がすっきりする。そんな経験をしたことのある人は少なくないだろう。だがそうした運動に、ストレスや不安、さらには依存症、うつ病までも実際に軽減する効果があると聞いたら驚くだろうか。

トークセラピー(会話療法)、自然、運動がそれぞれメンタルヘルスにもたらす治療効果については、これまで多くの研究がなされてきた。だが、それら3つを組み合わせた「ウォーキング・セラピー」は新しい治療アプローチで、「ここ数年、本当に関心が高まっている」と、米国心理学会で研究ディレクターを務めるC・ベイリー・ライトはワシントン・ポスト紙に語っている。

「ウォーキング・セラピー」はイギリスでも注目を集めている。元ロックミュージシャンの臨床心理士ジョナサン・ホーバンは、自身がウォーキングによりうつ病と依存症(ドラッグとアルコールの依存症だった)を克服した経験から、「ウォーキング・セラピー」を提唱。2014年に診療所「ウォーキング・セラピー・ロンドン」を開設した第一人者だ。

ここではホーバンが、現代人が忘れてしまった「野性の本能」を取り戻す方法、そして五感を活性化させる方法を説いたウォーキング・セラピーの指南書『ウォーキング・セラピー ストレス・不安・うつ・悪習慣を自分で断ち切る』(井口景子・訳、CCCメディアハウス)から一部を抜粋し、3回にわたって掲載する。

まずは「はじめに」から、仕事のストレスとウォーキングの効果について。スタンフォード大学ウッズ環境研究所の2015年の調査で、自然の中を90分間歩いた人は、うつに関連する脳の部位の活動が減少したという。

◇ ◇ ◇

檻に閉じ込められたときに起きること

一日の大半を職場で過ごし、それ以外の時間も仕事のことが頭から離れない生活を送っていると、ストレスホルモンの異名を持つ「コルチゾール」の分泌量が高まります。強いストレス状態が続くと、判断ミスを犯す、全体像を見失う、苛立ち、不安、うつ、精神疾患、アドレナリン依存症(スリルや興奮を追い求めずにはいられない状態。酒やドラッグといった外的要因の他に、ストレスが高まったときにもアドレナリンの分泌が増える)など、さまざまなトラブルにつながります。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中