最新記事

映画

スター・ウォーズ 映画公開3カ月以上も前に仕掛ける秘策

2017年9月6日(水)11時53分
藤原宏成(東洋経済記者)※東洋経済オンラインより転載

真っ赤に染まった代官山蔦谷書店。世界同時販売の「お祭り」が繰り広げられた(写真:ウォルト・ディズニー・ジャパン)©2017&TM Lucasfilm Ltd. All Rights Reserved.

8月31日、午後11時すぎ。東京渋谷区にある代官山蔦屋書店が真っ赤に染まった。映し出されたのは「STAR WARS」(スター・ウォーズ)の文字。ストームトルーパー(写真の装甲の兵士)など、おなじみのキャラクターが次々と登場した。

そして日付が変わった1日の0時1分。一斉に披露されたのが、スター・ウォーズの関連グッズだ。深夜にもかかわらず会場で待ち構えていた200人ほどのファンが、お目当ての商品を次々と手に取っていた。

世界同時に商品販売を解禁

今年12月15日に全世界同時公開が予定される映画「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」。蔦屋書店を映画のイメージカラーである赤に染めて行われたのは、その関連商品の販売解禁イベントだ。解禁日が金曜であることから「Force FridayⅡ」と名付けられたこのイベントは、日本だけでなく全世界で同時開催された。

このイベントは最後に「Ⅱ」と付くように、2度目の開催となる。1度目は2015年9月、シリーズ第7弾「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」の公開に先立って行われた。

スター・ウォーズを製作するルーカスフィルムは2012年、米ウォルト・ディズニーに買収されている。1度目はディズニー傘下として初めて、そしてシリーズとして10年ぶりの映画公開前に行われたイベントだった。「商品をここまでの規模で世界一斉に解禁することは、スター・ウォーズにとっても、ディズニーにとっても、前例のない試みだった」(ウォルト・ディズニー・ジャパンで商品ライセンス部門を統括するジャスティン・スカルポーネ氏)。

規模の大きさは今回も変わらない。違うのは目玉となるプロモーション手法だ。前回は動画サイトYouTubeで1時間おきに新商品を公開、そこで新キャラクターであるロボット「BBー8」をお披露目した。

今回はAR(拡張現実)を活用する。9月1日から3日間、世界30カ国・約2万カ所で映画に登場するキャラクターを描いた立て看板が設置される。事前にインストールしたアプリを立ち上げ看板をスキャンすると、そのキャラクターの画像と解説を集めることができる。

toyokeizai170906-2.jpg

看板をスキャンしてキャラクターを集める(記者撮影)

すべて集めると15個。中には今回初登場するキャラクターも3つ含まれている。通常、新キャラクターの解禁は映像やウェブサイトで行うが、ARを用いることで、ファンが受け身ではなく"体験"できるようにした。

「"体験"は商品戦略にとって、もはや外せないキーワード」とスカルポーネ氏は言う。キャラクターを集めるというゲーム性によって、SNS上での拡散やファン同士のコミュニケーションを生み出すことも狙っている。

「SNSは若い世代が使うイメージがあるかもしれないが、スター・ウォーズのコアファンである40代、50代の利用も多い。若い世代の取り込みとコアファンの深掘りの両方が狙える、一石二鳥の施策」(同)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中