最新記事

マイクロプラスチック

「魚や貝を通じてプラスチックを食べている」という研究結果が明らかに

2018年6月14日(木)15時20分
松岡由希子

検査したすべてのムール貝にマイクロプラスチックが含まれていた LauriPatterson-iStock

<海に流出した微小なプラスチックが、食物連鎖に取り込まれ、貝や魚を経て、私たちの日常の食卓にも影響を及ぼしつつあることが明らかになっている>

国際連合によると、海洋に流出しているプラスチック廃棄物は年間800万トン超。国連環境計画(UNEP)では、「このままのペースでは、2050年までに、海洋のプラスチック廃棄物の量は魚よりも多くなる」との予測のもと、2022年までに使い捨てプラスチックの消費量の大幅な削減を目標とした。この「クリーン・シーズ・キャンペーン」を2017年2月から展開し、プラスチック廃棄物による海洋汚染の防止に取り組んでいる。

とりわけ、長さ5ミリメートル未満のプラスチックくずは"マイクロプラスチック"と呼ばれ、海中の有害物質を吸着させる性質を持つことから、海洋生態系を脅かすのみならず、食物連鎖に取り込まれることによって、私たちの日常の食卓にも影響を及ぼしつつあることが明らかになっている。

検査したすべてのムール貝にマイクロプラスチックが含まれていた

英ハル大学とブルネル大学ロンドンの共同研究チームは、2018年6月、英国のムール貝を対象にマイクロプラスチックの含有の有無を調査し、その結果を学術雑誌「エンバイロメンタル・ポリューション」で発表した。

これによると、すべてのサンプルがマイクロプラスチックを含有。英国内で養殖されたムール貝よりも沿岸で水揚げされた天然物のほうがその含有量は多く、英国内のスーパーマーケットで流通しているムール貝については、調理済みのもののほうが生で販売されているものよりも多くのマイクロプラスチックを含有していた。

ムール貝の消費を通じて、人間の体内には、ムール貝100グラムあたり70粒のマイクロプラスチックが侵入していると推定されている。

養殖された二枚貝、魚の体内にも侵入している

2014年に発表されたベルギーのゲント大学の研究プロジェクトでも、養殖された二枚貝にマイクロプラスチックが含まれていることが明らかになっている。

この研究結果によると、ムール貝は1グラムあたり平均0.29から0.43粒、牡蠣には1グラムあたり平均0.31から0.63粒のマイクロプラスチックがそれぞれ含まれており、欧州の消費者は年間最大1万1000粒のマイクロプラスチックを摂取しているおそれがあるという。

もちろん、マイクロプラスチックは、貝類だけでなく、魚の体内にも侵入している。2015年に新リスボン大学の研究チームがポルトガル沿岸で水揚げされた26種263匹の魚について消化管の内容物を分析したところ、そのうちの19.8%にマイクロプラスチックの含有が認められた。

また、ベルギーのリエージュ大学の研究チームは、2017年7月、アンチョビなどのニシン目の肝にマイクロプラスチックが含まれていることを初めて明らかにし、消化器官から体内の他の部分にこれが移動している可能性を示唆するものとして注目されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3

ビジネス

米雇用なお堅調、景気過熱していないとの確信増す可能

ビジネス

債券・株式に資金流入、暗号資産は6億ドル流出=Bo

ビジネス

米金利先物、9月利下げ確率約78%に上昇 雇用者数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前の適切な習慣」とは?

  • 4

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 5

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 6

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    映画『オッペンハイマー』考察:核をもたらしたのち…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中