最新記事

アメリカ政治

トランプにブーイングした「白ジャケット」の女性たち

2017年3月1日(水)20時37分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

トランプが議会演説でオバマケア廃止に言及した際、ブーイングをした女性議員たち(2017年2月28日) CNN-YouTubeより

<トランプ大統領が議会で行った施政方針演説の際に目立った「白い服装で揃えた」女性議員の姿。彼女たちは何者で、何が目的だったのか>

ドナルド・トランプ米大統領が2月28日夜(日本時間3月1日午前)、初の施政方針演説に臨んだ。米議会上下両院本会議で、共和・民主両党の議員たちを前に、約1時間にわたり熱弁を振るった。

就任から約40日間、大統領令を乱発し、各国首脳と会談も重ねてきたトランプだが、これまでは具体的にどんな政策を打ち出し、何を優先課題として取り組むのか、はっきりしないところがあった。

この議会演説では、中間層向けの大幅減税や1兆ドル規模のインフラ投資、広範な移民制度改革などを約束。それでもまだ具体論に欠けるとの評も多いが、議場では共和党議員からの拍手喝采が続いた。

nc170301-sub.jpg

演説を行うトランプ大統領。後方左はペンス副大統領で、右がライアン下院議長(2017年2月28日) Jim Lo Scalzo-REUTERS

なかでも共和党議員団から大きな歓声が上がったのは、オバマケア(オバマ前政権による医療保険制度改革)の廃止に言及した時だ。「政府が承認した医療保険を国民全員に買わせるやり方は、アメリカにとって正しい解決策ではない」と述べ、スタンディングオベーションを受けた。

【参考記事】トランプ米大統領が議会演説、移民制度改革や減税表明

その時、議場の反対側では、ブーイングのジェスチャーをする女性たちがいた。全員が白い服装......よく見ると、他にも多数、白いジャケットの女性が。

彼女たちは何者で、なぜ服装を白で揃えているのだろうか?

民主党の女性議員たちだ。下院民主党女性作業部会のメンバーである66人の議員の多くが、20世紀初頭の婦人参政権運動への賛意を示し、純潔のシンボルである「白」のジャケットで揃えていたのである。

「前世紀に女性たちが成し遂げた素晴らしい進歩を後退させようとするトランプ政権に対抗するため、私たちは白い服を着て一致団結する」と、作業部会の長を務めるロイス・フランケル民主党下院議員は声明で述べていた。「すべての女性の進歩をこれからも支持し続ける」

「私たちは今晩、そうじゃない大統領を前にして、民主党の #女性が白を着る で女性の権利を支持する!」(ナンシー・ペロシ下院少数党院内総務の演説前のツイート)

女性の権利を支持する人々にとって、女性蔑視発言を行ったトランプへの反発はいまも根強い。1月の就任式翌日には、全米の主要都市で女性を中心とした反トランプ・デモが行われ、首都ワシントンだけでも20万人以上が集まった。

CNNによれば、アメリカの歴史上、「白」は女性の政治参加を象徴する色であり続けてきた。昨年の大統領選でも、民主党のヒラリー・クリントンは大統領候補指名を受諾した際、白のパンツスーツ姿だったし、投票日当日には#WearWhiteToVote(白を着て投票へ行こう)というハッシュタグの運動が展開された。

今回の議会演説でも、白で揃えた数十人の女性議員の姿はかなり目立っており、視聴者に強い印象を残したかもしれない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国企業、28年までに宇宙旅行ビジネス始動へ

ワールド

焦点:笛吹けど踊らぬ中国の住宅開発融資、不動産不況

ワールド

中国人民銀、住宅ローン金利と頭金比率の引き下げを発

ワールド

米の低炭素エネルギー投資1兆ドル減、トランプ氏勝利
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中