最新記事

最新版アルツハイマー入門

中年の運動不足が脳の萎縮を促す

2017年10月24日(火)15時20分
ジェシカ・ファーガー

KANGAH/ISTOCKPHOTO

<ダラダラ生活で体力が低下している人は、脳が萎縮し認知能力が下がる傾向が明らかに>

座ってばかりで体を動かさない生活を送っていると、糖尿病や心臓病、癌といった慢性疾患にかかりやすくなる――そう言われるようになって久しいが、最新研究によると運動不足は脳の萎縮、ひいては認知能力の低下までもたらしかねないという。

ニューロロジー誌で16 年に発表されたボストン大学医学大学院のニコール・スパータノらの論文によれば、中年期の体力不足(普段から運動していないということ)は20年後の脳細胞の量の減少に影響を及ぼす可能性があるという。

つまり、運動には老化から脳を守る効果があるということだ。「脳の大きさは脳の老化を示す指標の1つだ。人間の脳は年を取るにつれて小さくなるが、こうした脳の萎縮は認知能力の低下をもたらし、認知症のリスクを増加させる」とスパータノは語る。「脳の老化を早める要因、特に運動するための体力といった可変要因を洗い出す重要性はそこにある」

過去の多くの調査から、循環器系の健康が改善されれば脳を流れる酸素の量が増えることが明らかになっている。スパータノによれば、時の経過とともにそれが脳の老化を遅らせる効果となって表れるのだという。

研究チームは、フレーミンガム心臓研究の参加者で心臓疾患も認知症も患っていない1583人のデータを分析した。フレーミンガム心臓研究とは、マサチューセッツ州フレーミンガムの3世代にわたる住民を対象とした有名な疫学研究だ。

記憶力と心肺能力の関係

まずは体力を調べるため、ランニングマシンを使って心拍数が一定水準に達するまでどのくらいの時間、走り続けられるかを測定。そして20年後に同じように体力を測るとともに、MRI(磁気共鳴映像法)で脳をスキャンした。

その結果、走り続ける体力と脳の萎縮には関係がみられた。体力が8単位低くなるごとに、20年後の脳は1年分余計に老化が進んでいた。激しい運動をすると心拍数や血圧が特に高くなる人の場合は、脳の萎縮の進み具合がさらに激しかった。

【参考記事】孤独感の持ち主は認知症になる確率が1.64倍

【参考記事】ほどほどでも飲酒を続けると脳には有害?

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し

ビジネス

日本製鉄副会長が来週訪米、USスチール買収で働きか

ワールド

北朝鮮の金総書記、核戦力増強を指示 戦術誘導弾の実
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 4

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 9

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 10

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中