不祥事でも揺るがぬIOCの五輪ビジネス 開催地もスポンサーもアジアがけん引
スポンサー企業側も、消費者は単にそれほど気にしていないと話す。
「(五輪)ブランドにマイナスの傷がついたという証拠はまだ目にしていない」と、最高位のスポンサー企業の1つ、化学大手ダウ・デュポンの五輪スポーツソリューション担当のルイス・ベガ副社長は言う。
スポンサー側のこうした発言や潤うIOCの金庫は、相次ぐマイナスの評判や西側都市における五輪招致への関心低下で、五輪ブランドの価値が保てなくなると考える一部専門家の見方と好対照をなしている。
マサチューセッツ州にあるスミス大学の経済学者で、ボストンで五輪招致反対運動のアドバイザーも務めたアンドリュー・ジンバリスト氏は、スポンサー企業はこうしたことを理解しているが、それを認めていないだけだと話す。
「現在の五輪スポンサー企業が、五輪ブランドは揺るがないと言っていること自体に大きな意味はない」と、ジンバリスト氏は言う。「五輪との関係構築に何千万ドルも注ぎ込んだ企業が、IOCのイメージを傷つけるようなことをするだろうか。投資の価値を下げるだけだ」
持続可能な大会実現のための改革案「アジェンダ2020」が策定された後ですら、巨大スペクタクルのために巨額を投入する開催都市側の意思が、IOCのビジネスモデルを支え続けている。
とはいえ、リスクを取る意欲がある都市は減っている。アジェンダ2020の発効後に2024年夏季五輪の開催都市に決まったパリは、約68億ユーロ(約9000億円)の予算を組んでいる。パリが開催都市に決まったのは、ほかに立候補していたボストンやローマ、ハンブルグやブダペストが撤退した後だった。
アジアでは対照的に、五輪招致に手を挙げる都市はまだ多く、IOCやスポンサーを安堵(あんど)させている。
2022年の北京冬季五輪まで、五輪は3大会連続でアジアで開催されることになる。また2026年の冬季五輪には、札幌が招致を目指している。
「アジアは世界に向けて一層開かれようとしており、社会の一部としてのスポーツがその傾向を追っているというのも理屈にかなったことだ」と、IOCのバッハ会長はロイターに語った。