最新記事

ヘルス

20歳になったバイアグラ、偽物にこれだけのリスク

2018年4月25日(水)17時40分
ケイト・シェリダン

バイアグラ(写真)の偽造品には有害な成分が含まれている危険性がある Viaframe-Corbis/GETTY IMAGES

<カルチャーもにぎわせた勃起不全治療薬バイアグラだが、簡単に買える偽造品に米当局は警告を発している>

今年3月27日、バイアグラは20回目の「誕生日」を迎えた。米食品医薬品局(FDA)に認可されて20年が過ぎたのだ。その間、多くの男性がこの勃起不全治療薬を服用。年平均で約15億ドルの売り上げを記録している。

バイアグラはカルチャーの世界でも大人気を得た。ラップの歌詞やテレビのバラエティー番組、映画にも登場し、10年の映画『ラブ&ドラッグ』では「主役」にもなった。

世の常として、有名になると偽造品が続々と出現する。オンラインや街角の店で売られる性的機能強化サプリメントは、処方箋がなくても買える。

こうしたサプリは「天然」成分という触れ込みだが、FDAは警戒を強めている。多くの製品には、バイアグラの有効成分であるシルデナフィルやFDA承認の勃起不全治療薬で使われる別の化合物をひそかに改変した物質、時にはそれらを有害な形に改変した物質が含まれる。もちろんFDAの規制違反だ。

FDAはこうした製品の製造・販売ルートを追跡してきたが、そこでは当局の「能力不全」があらわになるばかりだ。

勃起を引き起こす化合物の中でも、シルデナフィルは偽造しやすい。「原材料はかなり入手しやすく、安価だ」と、シンガポール国立大学の薬理学者コー・フィー・リンは言う。

しかしシルデナフィルは特定の薬と併用すると、危険なレベルの低血圧などの副作用を引き起こす。しかも、この成分を含むサプリを服用した後に心臓発作で死亡しても、誰もサプリが死因だとは思わない。改変されたシルデナフィルは成分として記載されていないためだ。

FDAで非処方薬と健康詐欺部門を統括するブラッド・ペースによれば、非表示成分を含む薬の追跡は不可能なことが多い。世界中の流通業界や卸売り、小売業者を追う羽目に陥るからだ。

当局とのいたちごっこ

FDAの取り締まりは、ある程度の成功を収めている。11年には、性的欲求の高進や体重減少を目的とする有害なサプリを販売していたノバケア社の社主が、製品に関する6件の重罪で告発され、懲役3年の判決を受けた。16年にもサプリメーカーのオーナーが、詐欺罪で懲役6カ月の判決を受けている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

為替円安、行き過ぎた動きには「ならすこと必要」=鈴

ワールド

中国、月の裏側へ無人探査機 土壌など回収へ世界初の

ビジネス

ドル152円割れ、4月の米雇用統計が市場予想下回る

ビジネス

米4月雇用17.5万人増、予想以上に鈍化 失業率3
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 6

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 10

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中