最新記事

マーケティング

交換部品で荒稼ぎ? 自動車メーカーの「隠れた武器」価格設定ソフト

2018年6月11日(月)10時51分

6月3日、過去10年間で10億ドル(約1100億円)を超える増収を実現した仏ルノーやプジョー、英ジャガー・ランドローバーといった自動車メーカーの戦略を支援したのは先進的価格設定ソフトだという。写真は中国の四川省成都市で2016年、PSAグループと東風汽車の中国合弁企業の工場。チャイナデイリー提供(2018年 ロイター)

過去10年間で10億ドル(約1100億円)を超える増収を実現した仏ルノーやプジョー、英ジャガー・ランドローバーといった自動車メーカーの戦略を支援したのは先進的価格設定ソフトだという。

製作元のアクセンチュアが顧客向けに行ったプレゼンテーションによれば、そのソフトは各メーカーの顧客層がもっとお金を払っても構わないと考えるスペア部品、その望ましい値上げ幅、また値上げすべきではないパーツを特定する機能を持つ。

同ソフト開発を手掛けたローラン・ブーブール氏が裁判所に提出した訴状によれば、「値上げすべきではない部品」にはラジエーターや車体部品などが含まれる。保険各社の支援を受けたフランスの自動車保険修理協会(SRA)がインフレ率算出の際に価格を織り込む部品リストに、これらが含まれる可能性があるからだ。

この訴訟の関連文書は、仏ニュースサイト「メディアパール」が入手したもので、欧州の調査報道ネットワークEICとロイターにも提供された。

ロイターが閲覧した顧客向けプレゼンテーションと訴状の内容は、2009年から2015年までの期間をカバーしている。

ジャガー・ランドローバーは現在も、この「パートネオ」と呼ばれるソフトの使用を認めているが、同ソフトを今も使い続けている自動車メーカーが他にも存在するのか、ロイターは確認できなかった。

アクセンチュアは、このソフトが自動車利用者に不公正になる可能性を否定しており、自動車メーカーの効率改善が狙いだと主張する。

「企業による自社製品の評価・管理を支援するこの種のソリューションは、複数の業界で広く使われている。これらは企業によるスペア部品の見通しやその入手可能性についての分析を手助けするものだ」と同社は声明で説明した。

ブーブール氏は、アクセンチュアが欧州の競争ルールに違反したことにより、自身の評判が傷ついたとして、同社に3300万ユーロ(約43億円)の支払いを求めている。

同氏によれば、アクセンチュアは仏PSAグループのための価格体系を構築する際に、ルノーから入手した非公開情報を利用しており、他のメーカー向けにも同じことをやった可能性があるという。訴状では、具体的な情報を明らかにしていない。

係争中の訴訟について同氏はコメントできないと、彼の弁護士は語る。アクセンチュアは、同氏の訴えを否定している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏「6歳児と戦っている」、大統領選巡りトラ

ワールド

焦点:認知症薬レカネマブ、米で普及進まず 医師に「

ワールド

ナワリヌイ氏殺害、プーチン氏は命じず 米当局分析=

ビジネス

アングル:最高値のビットコイン、環境負荷論争も白熱
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中