最新記事

マーケティング

交換部品で荒稼ぎ? 自動車メーカーの「隠れた武器」価格設定ソフト

2018年6月11日(月)10時51分

アクセンチュアは2013年、独BMWに対して行ったプレゼンテーションのなかで、同社ソフトを使うことにより、顧客企業は部品価格を平均15%引上げることが可能になった、と説明した。

だが、推奨される値上げ幅は製品によって大きく異なる。

ロイターはアクセンチュアがPSA、ホンダ、ボルボなどクライアント6社を相手に行ったプレゼンテーションを閲覧したが、多くの交換用部品について、価格を2倍にすることが推奨されていた。

2013年10月に行われたボルボ向けのプレゼンテーションでは、「パートネオ」により、自動車・トラックメーカー7社で合計4億1500万ドルの「通年での増収が実現」したと述べている。

ボルボは「パートネオ」ソフトを使っていないと言うが、このプレゼンテーションについてはコメントを拒否している。PSAは、スペア部品価格の値上げの有無や、値上げ幅についてコメントを拒否している。ホンダにもコメントを求めたが回答は得られなかった。

アクセンチュアはプレゼンテーションのなかで、「パートネオ」は知覚価値価格算定方式に依拠している、と述べている。

メーカーでは部品価格について特定のマージンを追求することが多いが、このソフトは、消費者が通常のマージンより高い価格でも喜んで購入するような部品を特定しようと試みている。

顧客向けプレゼンテーションによれば、同ソフトは「自動車購入者から見て価値が高い、あるいは製造コストが高く見える製品は何か」という基準で、値上げ可能な部品を選択する。

アクセンチュアは2009年、仏PSAに対して行ったプレゼンテーションで、あるパーツの本質的価値についての顧客の認識は、大きさや重量、光沢のあるエンブレムや歯車といったアイテムの素材によって決まることが多いと指摘している。

三菱自動車に対するプレゼンテーションでは、銀色の車種別エンブレムの価格を14.42ユーロから87.49ユーロへと6倍以上に値上げしてはどうかと提言。三菱自では、同ソフト利用の有無、またスペアパーツ価格の値上げの有無についてコメントを拒否している。

業界アナリストによれば、自動車部品ビジネスは以前から非常に収益性が高かったという。

メーカー各社は、乗用車販売において10%以上のマージンを得ることに苦労しているが、アクセンチュアは、2013年に行ったBMW南アフリカ事業部向けのプレゼンテーションの中で「スペアパーツの粗利益率は最大90%に達する可能性がある」と述べている。

BMWは「パートネオ」ソフトを利用しないことに決めたと述べているが、詳細な説明は拒否した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米主要シェール産地、6月原油生産量が半年ぶり高水準

ワールド

加ブリティッシュコロンビア州で大規模な山火事、消火

ビジネス

日銀のオペ減額、金融政策の具体的な手法はコメント控

ビジネス

米インフレの主因、企業の値上げではない=SF連銀調
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    年金だけに頼ると貧困ライン未満の生活に...進む少子…

  • 5

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「人の臓器を揚げて食らう」人肉食受刑者らによる最…

  • 9

    ブラッドレー歩兵戦闘車、ロシアT80戦車を撃ち抜く「…

  • 10

    自宅のリフォーム中、床下でショッキングな発見をし…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 6

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中