最新記事

在韓米軍

トランプの「米韓演習中止」で米軍困惑 即応体制維持できるか

2018年6月17日(日)11時00分

2017年4月、南北軍事境界線の近くの演習場で実弾訓練を行う米韓の戦車(2018年 ロイター/Kim Hong-Ji)

トランプ米大統領が米韓合同軍事演習の中止を表明し、北朝鮮に予期せぬ譲歩を示したことを受け、米軍当局者は在韓駐留軍の即応体制をどう維持できるか、その対応を迫られている。

米政府関係者は、米軍と韓国軍が共同で行う訓練のうち、どこまでが大統領が中止を決めた「軍事演習」にあたるのか明確ではないと指摘。だが新たな指針の下では、大規模な米韓演習は実施不可能のようだ。

「在韓米軍の即応体制は維持する。そこは間違えないでほしい」と、ある米政府関係者は断言。ただ、どうそれを実現するか、現段階でははっきりしないとも認めている。

トランプ大統領は12日、シンガポールで行われた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長との歴史的な首脳会談後に、米韓演習を中止する意向を表明。大統領は、こうした演習が多額のコストがかかる上に、「非常に挑発的」だと発言し、これまで米側がはねつけてきた北朝鮮からの批判をなぞる形となった。

米朝会談後にソウル入りしたポンペオ米国務長官は13日、トランプ大統領が、北朝鮮と生産的で誠実な交渉が続いている間は、演習を凍結することを明確にした、と記者団に語った。

「北朝鮮の非核化に向けた生産的な対話をするため、環境を整えるのが、(トランプ大統領の)意図だ」と、ポンペオ長官は述べた。

韓国における軍事演習の中止は、現旧の米軍関係者を困惑させている。彼らは、トランプ大統領の今回の表明まで何も知らされていなかったという。

合同演習の中止によって、世界でも最も軍事的な発火点となる可能性の高い地域で、米軍の即応体制が損なわれることを軍関係者は懸念している。在韓米軍は長年、高度な訓練を重ねて「今夜にも戦える」体制にあることを誇りとしてきた。

米議会などからは、合同軍事演習の中止により、米韓軍事同盟の効力が揺らぎかねないとの批判の声も上がっている。また、演習中止により予算を削減できるとのトランプ氏の発言も反発を招いている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

神田財務官、介入有無コメントせず 過度な変動「看過

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中