最新記事

映画

養女虐待疑惑ウディ・アレンの自己弁護、『女と男の観覧車』

2018年6月22日(金)19時15分
サム・アダムズ

脚本家志望のミッキーは元女優のウエートレス、ジニーと付き合い始めるが PHOTO BY JESSICA MIGLIO (c)2017 GRAVIER PRODUCTIONS, INC

<巨匠ウディ・アレンの新作映画は、自らの私生活上のスキャンダルを連想させるストーリーだが......>

ウディ・アレン演じる42歳のテレビ番組構成作家が17歳の女子高生と恋人同士になる――アレンが監督した79年の映画『マンハッタン』は、アカデミー賞2部門にノミネートされるなど、恋愛映画の傑作として高く評価されていた。

しかし、あるときを境に暗い影が差す。92年、アレンが同棲相手である女優ミア・ファローの養女スンイと性的関係を持っていたことが発覚した。2人の関係は、スンイが『マンハッタン』の女子高生とほぼ同じ年齢の頃に始まっていた(アレンとスンイは97年に結婚)。

14年には、アレンとファローの養女であるディランが、7歳の頃にアレンから性的虐待を受けたことを告発した。この疑惑は約20年前に一度浮上していたが、当時はほぼ黙殺され、アレンの監督生命が絶たれることはなかった。

アレンはタイム誌の力を借りて、スンイとの関係を愛の物語として印象づけることに成功した。同誌のインタビューで「感情は抑えようがない」と語っている。「ある人と巡り会い、恋に落ちずにいられなかった。要するに、そういうことだ」

男と女が出合い、恋に落ちずにいられなかったという説明は、アレンの新作『女と男の観覧車』のストーリーそのものだ。

映画の舞台は、50年代のニューヨーク。コニーアイランドの遊園地のレストランで働く人妻の元女優ジニー(ケイト・ウィンスレット)を中心にストーリーが展開する。語り手を務めるのは、海水浴場の監視員をしながら脚本家を目指すミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク)だ。

ミッキーはジニーと関係を持つようになるが、やがてジニーの義理の娘キャロライナ(ジュノー・テンプル)とも恋に落ちそうになる。キャロライナは、ジニーの夫が前妻との間にもうけた娘。長く音信不通だったが、ジニーと夫と幼い息子リッチーが3人で暮らしていた家に転がり込んでくる。

これは「自白」ではない

観客は、アレンをめぐるスキャンダルを思い出さずにいられない。しかもミッキーは脚本家志望で、『ハムレットとオイディプス』という研究書をいつも持ち歩いている。シェークスピアの悲劇『ハムレット』とギリシャ悲劇の『オイディプス王』は、アレンの映画でもしばしば意識されている作品だ。

物語がクライマックスに近づくにつれて、この映画とアレンの実人生の共通点がますます際立ってくる(以下、ネタバレありなので注意)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

EXCLUSIVE-チャットGPTなどAIモデルで

ビジネス

円安、輸入物価落ち着くとの前提弱める可能性=植田日

ワールド

中国製EVの氾濫阻止へ、欧州委員長が措置必要と表明

ワールド

ジョージア、デモ主催者を非難 「暴力で権力奪取画策
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 10

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中