最新記事

バイオハッキング

北欧スウェーデンで体内へのマイクロチップの埋め込みが広がる理由とは

2018年7月4日(水)17時00分
松岡由希子

乗客の体内に埋め込まれたマイクロチップを乗車券の代わりに利用できる Dezeen-Youtube

<スウェーデンでは、体内埋め込み型マイクロチップを乗車券や入退室管理などに利用され始めている。なぜ、スウェーデンでそこまで進むのか、その背景は...>

手に埋め込んだマイクロチップを乗車券の代わりにして電車を利用し、手をかざしてオフィスの出入り口を解錠する----。
北欧スウェーデンでは、こんな近未来のような光景が現実になりつつある。

スウェーデン鉄道(SJ)は、世界で初めて、乗客の体内に埋め込まれたマイクロチップを乗車券の代わりに利用できる検札システムを2017年5月から導入。

首都ストックホルムのイノベーションセンター「エピセンター」でも、体内埋め込み型マイクロチップに対応した入退室管理システムが設置されている。

スウェーデンを拠点とするNFC(近距離無線通信)対応マイクロチップ専門開発ベンダー「バイオハックス」では、これまでに、スウェーデン国内の従業員およそ3500名に対してマイクロチップの埋め込みが実施されている

体内埋め込み型マイクロチップを乗車券を利用できるスウェーデン鉄道 Dezeen-Youtube

スウェーデン独自の「バイオハッキング文化」

それでは、なぜ、スウェーデンで、体内へのマイクロチップの埋め込みが広がっているのだろうか。スウェーデン・ルンド大学のモア・ピーターセン博士は、その背景として、スウェーデン独自の"バイオハッキング文化"をあげている。

バイオハッカーとは、大学や企業、研究機関といった既存の専門組織の外で、テクノロジーを駆使して生物学的なものを解析したり改変したりするアマチュア生物学者をいい、その目的や思想などに応じて、様々なグループに細分化されている。

そのひとつが、新しい科学技術を用いて人間の身体と認知能力を進化させ、人類を長期的に向上させようとする「トランスヒューマニズム(超人間主義)」の流れをくむもので、とりわけ、医者によらずにマイクロチップを体内に埋め込むなど、自分の体を使って実験を行う人々を「グラインダー」と呼んでいる。ピーターセン博士によれば、スウェーデンのバイオハッカーは概ね、このグループに属しているという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 5

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中