最新記事

テクノロジー

「空飛ぶ電車」は夢のまた夢か?

2018年7月18日(水)19時00分
スコッティー・アンドルー

航空機のエンジンを積んで線路の上空を走る「空飛ぶ電車」構想 Dahir Insaat/YOUTUBE

<ロシアの発明家セメノフが、時速600キロで2000人の乗客を運ぶ「空飛ぶ電車」構想を発表した。セメノフは技術的にも十分実現可能だと太鼓判を押す>

鳥だ、飛行機だ、いや空飛ぶ......電車だ!

航空機用のエンジンを利用すれば、既存の陸の乗り物をはるかに上回るスピードを出し、車体を宙に浮かせることができるのではないか──奇抜な着想で有名なロシア人エンジニア、ダヒール・セメノフは、そこから空を飛ぶ電車を思いついた。

セメノフはそのアイデアを動画に仕立ててユーチューブで公開した。デザインは4パターン、どれも時速650キロ超の高速で最大2000人の乗客を運ぶことができる。既存の公共交通機関の効率を改善するための未来に向けたプロジェクトだ、と彼は言う。

webt180718-train02.jpg
一度に乗客2000人を運ぶことができる Dahir Insaat-YOUTUBE


セメノフの「空飛ぶ電車」は線路に沿って、その数百メートル上空を飛行する。セメノフの会社ダヒール・インサートによれば、この電車の車体は超軽量で、電流コレクタや飛行中の電車をレールと結ぶ電子のアームは磁力で取り付ける。方向転換には翼の傾きを利用する。

だが専門家にいわせれば、彼のアイデアは「楽観的」過ぎであって、近い将来に実現するとは思えない。

持続可能な輸送機関を専門とするコネチカット大学工学部のノーマン・ギャリック教授は、米NBCニュースのインタビューに答え、将来の移動手段は、実用化の前に長い年月がかかりかねない斬新な技術の開発というより、むしろ既存のテクノロジーを改善する形になるだろうと述べた。

「必要とされる物は、必ずしも新しい物ではない。すでに機能している物がたくさんあるからだ」と彼は言う。「すでにあるものを、われわれがどのように使うかが問題だ」

夢の新技術は停滞中

すでに鉄道輸送のスピードと効率を高めた国はいくつもある。日本や韓国、ロシアでは、高速鉄道が全国に張り巡らされ、自動車による移動の半分の時間で大都市間をつないでいる。中国の高速鉄道列車「復興号」は世界最速を誇り、最高速度は時速400キロに達する。

他の新たな技術の開発は、ここ数十年間停滞し、まだ可能性をフルに発揮する段階に達していない。

エンジニアにとって40年以上前からの夢だった自動運転車は試験走行が始まったが、衝突や横転などの事故が相次いでいる。

開発に取り組んできたグーグル、ウーバー、テスラの自動運転車は、すべて今年になって事故を起こした。そのうち2件は死亡事故となり、今後1~2年で自動運転車の実用化に踏み切ろうとしていた開発者側の計画に大きな打撃を与えた。

奇抜な未来のテクノロジーのアイデアをCGIで製作し、ユーチューブで公開しているセメノフの会社ダヒール・インサートは以前、ジャイロスコープの原理を利用したバス交通網を提案した。このバスは、車道に敷かれた線路上を走行するが、本体は車道の数メートル上の空間を移動するため、混みあう都市中心部でも移動しやすい。

交通機関以外でも、大地震で建物が倒壊したときに就寝中の人間の命を守るベッドのアイデアも動画で公開している。ベッドのマットレスの下に空気のついた巨大な頑丈な箱が設置されており、地震の揺れを感知すると、マットレスが眠っている人間ごと箱の中に落ち、上から蓋がかぶさる仕組みだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 5

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 6

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中