最新記事

北朝鮮

「ワシントンとNYを核攻撃したい」北朝鮮エリートがホンネ激白

2018年8月7日(火)15時45分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)※デイリーNKジャパンより転載

金正恩氏 KCNA/REUTERS

<中国でインタビューした北朝鮮の秘密警察要員に語った時代錯誤と不満>

韓国のデイリーNK取材班は最近、中国の某所で、北朝鮮の国家保衛省(秘密警察)の要員とのインタビューを行った。国家保衛省は、政治犯収容所の運営や公開処刑を担当する、恐怖政治の象徴。最近になり、権威の低下が囁かれてはいるが、今なお金正恩体制のエリートであることに違いはない。

この要員が語った内容をひと言で表現するなら、「鬼畜米英」を唱えた旧日本軍の青年将校のようなイメージだ。米国への露骨な反感を隠さず、「個人的には、(核爆弾を)他には落とせなくても、ニューヨークとワシントンには1発ずつ落とすべきだと思う」などと言っている。金正恩党委員長が米国に対して非核化を約束したことについて、合理的であると理解を示しつつ、対北制裁は理不尽であるとして、本気で怒っているようだ。

次に印象的だったのは、国内での韓流コンテンツの流行をあっさり認め、どうやら本人もかなりの数を視聴しているような口ぶりであることだ。北朝鮮において、韓流コンテンツの視聴は重罪であり、拷問を含む強硬姿勢で取り締まっているのが国家保衛省なのである。

参考記事:北朝鮮の女子大生が拷問に耐えきれず選んだ道とは...

この要員も、韓流コンテンツについて「面白い」とは語っていない。むしろ、韓国のテレビに出演して北朝鮮の内情を暴露する脱北者たちについて、「あまりにも誇張されている」「祖国では無償教育、治療の恩恵を受けていたくせして、今になって変節していやがる」などと怒りを露わにした。

だが、北朝鮮国民が無償治療制度の恩恵を受けているという部分は、逆にこの要員の言っていることの方が誇張であり、あるいは虚偽である。無償治療制度はとっくの昔に崩壊し、北朝鮮の医療は悲惨な状況にある。

こうした内容を見ると、この要員は体制の正当性を主張したいあまり、事実を捻じ曲げているか、あるいは事実が見えていないだろう。国家保衛省は脱北者を強制帰国させる作戦にも従事しているが、こうした考えを持つ要員が相当数いるならば、手荒なマネが出来るのも理解できる。

参考記事:美人タレントを「全身ギプス」で固めて連れ去った金正恩氏の目的

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン大統領、31万人に学生ローン免除 美術学校

ワールド

米名門UCLAでパレスチナ支持派と親イスラエル派衝

ビジネス

英シェル、中国の電力市場から撤退 高収益事業に注力

ワールド

中国大型連休、根強い節約志向 初日は移動急増
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 7

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 8

    なぜ女性の「ボディヘア」はいまだタブーなのか?...…

  • 9

    衆院3補選の結果が示す日本のデモクラシーの危機

  • 10

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 9

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中