最新記事

米中関係

中国はアメリカ中間選挙の結果をどう見ているか──「環球時報」社説

2018年11月10日(土)20時00分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

トランプ米大統領 トランプ米大統領、中間選挙から一夜明け会見。記者と口論し、出入り禁止に Kevin Lamarque-REUTERS

中国の外交部報道官はコメントしないと言ったが、環球網の社説は詳細に中間選挙の結果を分析し、中国への影響のみならず、他国への影響も考察している。環球網が言わせたと思われるネットのコメントも見てみよう。

中間選挙の結果全般に関して

中国外交部の報道官は定例記者会見で「アメリカの中間選挙の結果をどう見ているか」という質問に対して「(また選挙妨害をしていると言われるので)コメントできない」と皮肉を交えて回答した。選挙期間中にトランプ大統領が、中国が選挙に介入し「(中国に厳しい)自分(の所属する共和党候補者)を落とそうと工作している」という趣旨の批難をしたことを指している。

しかし、中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版である「環球時報」電子版「環球網」は、11月7日に「米民主党下院奪還、喜ぶ者もいれば嘆く者もいる」というタイトルの長い社説(評論)を掲載した。

その中で、中国に対する影響に関して分析しているが、まず、結果全般に関する中国側から見た解説の概要をご紹介したい。

1.下院の多数を民主党が制したために、トランプはやりにくくなっただろう。下院で共和党が負けたのは、アメリカ国民がトランプ流独断に対して下した審判の一つとみなすことができる。

2.しかし、これは決して2020年の大統領再選の命運を決したことにはならず、トランプは必ずさらなる強硬路線と民主党との妥協路線の両面を駆使して大統領再選を目指すだろう。民主党に大統領候補となり得るような見るべき大物がいないのも、今のところトランプには有利だ。

3.もっとも、下院は多数を頼みとして大統領の弾劾を主張するだろう。ただ弾劾は上院議員3分の2以上の賛同を取りつけないと成立しないので、弾劾自体が成功することはないと見ていい。それでも民主党は弾劾を主張することによってトランプの大統領再選を阻むことを考える可能性は大きい。

中間選挙の結果が外交、特に中国に及ぼす影響に関して

1.北朝鮮に対するトランプの融和的な姿勢が批判される可能性も大きく、トランプとプーチンの、本当は仲良くしたい関係にも相当な圧力がかかるだろうが、下院の外交権には制限があるので、トランプはこれまで通りの方針を貫くだろう。

さて、対中路線だが、今般の中間選挙の結果による影響を最も受けないのが、ほかならぬ中国だ。なぜなら、民主党はもともと対中強硬路線の傾向が強いので、対中強硬路線において、実は共和党も民主党も一致しているからである。その証拠に、今般の中間選挙で民主党はひとことも「トランプの対中強硬路線」を非難していない。それどころか、民主党は「人権問題」に関しては、トランプよりも激しく追及してくるので、アメリカの対中強硬路線が緩むとは考えられない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中