最新記事

中国

「習近平は最も危険な敵」米投資家ソロス氏も中国のハイテク脅威認識

2019年1月29日(火)17時24分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

ダボス会議における米投資家ジョージ・ソロス氏(2015年) Ruben Sprich-REUTERS

中国経済崩壊を指摘してきた大物の米投資家ソロス氏が先日のダボス会議で講演した。ようやく中国のハイテク脅威に目を向け始めたが、まだ「中国製造2025」の野望には気づいていないようだ。講演の締めが甘い。

習近平は自由主義社会の「前代未聞の危険な敵」ダボス会議で

今年1月24日、米投資家のジョージ・ソロス氏は、スイスで開催されたダボス会議で講演し、「中国の習近平国家主席は先端技術を用いた監視体制を支配し、自由社会の前代未聞(UNPRECEDENTED)の危険な敵だ。中国は世界において独裁的な政権であるだけでなく、最も裕福で強力で、技術的に進んでいる」と批判した。AFPなどが報道しているが、中国でも中国共産党機関紙「人民日報」の姉妹版「環球時報」やその電子版「環球網」などが中国外交部の反論を含めて報道している

それによればソロス氏はディナーで、次のように述べたそうだ。

「ひとたび中国企業が5G技術に関して主導的役割を果たすようになってしまったら、世界各国はもう、その脅威から抜け出すことができなくなる。もし中興通訊(ZTE)や華為(Huawei)などが5G市場を占拠するようなことになったら、世界各国に計り知れない安全上のリスクをもたらすことになるだろう」

これに対して中国外交部の報道官は定例記者会見で「このような本末転倒した言論は、反駁するに値しない」と一蹴し、「現在の世界において、いったい誰が門戸を開いて道を創ろうとしているのか、誰が壁を築いて門戸を閉ざそうとしているのかは一目瞭然だろう」と続けた。

これまでは中国経済崩壊論を強調したソロス氏

ソロスはこれまで、中国経済が近いうちに崩壊するとして、そのシナリオを執拗なまでに強調してきた。

たとえば2016年1月7日、スリランカのコロンボで開催された経済フォーラムでは「中国の金融市場には深刻な難題が見られる」と言い、同月の21日に開催されたダボス会議では「中国経済のハードランディングは不可避だ」と断言している。そして中国は企業の債務残高が多くなりすぎているため、中国経済はバブル崩壊して一気に経済が落ち込んでしまうだろうと予測した。

そのため日本でも中国経済崩壊論が流行り、GDP成長率がわずかでも下がれば、「もう明日にも崩壊が始まる」と日本国民を喜ばせたものだ。

しかし、一向に崩壊の兆しは見えない。

それどころかソロスは今般、「中国は世界において独裁的な政権であるだけでなく、最も裕福で強力で、技術的に進んでいる」と「批判」しているではないか。

経済が崩壊するはずの中国が「最も裕福で強力で」となり、おまけに「技術的に進んでいる」と言っているのだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 4

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 5

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中