最新記事

AI

キッチン用品と交換で顔データ収集 中国で急成長の産業

2019年7月15日(月)19時13分

犬が吠え、鶏が歩き回るなかで、住民が未舗装の道路沿いに並び、自分たちの顔の画像と引き替えに、ヤカンやポット、ティーカップを手に入れている。写真は河南省の村で3月20日撮影(2019年 ロイター/Cate Cadell)

ここは中国内陸の河南省にある某村。犬が吠え、鶏が歩き回るなかで、住民が未舗装の道路沿いに並び、自分たちの顔の画像と引き替えに、ヤカンやポット、ティーカップを手に入れている。

列の先頭では、三脚に取り付けたカメラの前に1人の女性が立っている。彼女は顔の前に、目と鼻の部分を切り取った自分の顔写真を持ち、ゆっくりと向きを変えている。

住民らは整理番号付きのチケットを持って順番を待っている。何人かは、この種の仕事に来るのは3、4回目だと話していた。

かつての国家指導者である故毛沢東主席のポスターも飾られた、中庭付きの静かな農家の外で進められているのは、AIソフトウェアが現実の顔の特徴と静止画を区別できるように訓練するための素材を収集するプロジェクトだ。

Qianji Dataのリュー・ヤンフェンCEOは、「最大のプロジェクトには数万人が参加している。すべてこの地域に住む人々だ」と語る。同社はこの村に近い、平頂山市の企業で、データを収集・分類し、中国の最大手テクノロジー企業数社に提供している。

リュー氏は「我々はさらに多くのデータセットを作り、さらに多くのAIアルゴリズム企業に提供する。それによって、中国の人工知能開発に貢献できる」と語るが、提供先企業の名称は明らかにしなかった。

AIアルゴリズムの訓練用データへの需要は急増しており、写真や動画などの情報を収集する新たなグローバル産業が育ちつつある。収集された情報は分類され、AIに今見ているものが何であるかを教えている。

こうしたデータ分類、あるいはデータ・アノテーションと呼ばれる事業に関与する企業としては、アマゾン・ドットコムが運営するメカニカル・タークなど簡単な作業と引き替えにユーザーに少額の報酬を提供するクラウドソーシングサイト、インドのウィプロなどのアウトソーシング企業、さらにはQianjiのようにデータ分類を専門とする企業がある。

AI分野に特化した米調査会社コグニリティカの試算によれば、機械学習に関連した世界のデータ・アノテーション市場は2018年に66%成長して5億ドル(約540億円)規模に達し、2023年までにはさらに2倍以上に拡大すると見られる。だが一部の業界関係者は、事業の大部分については情報が開示されておらず、正確な試算は困難だと話している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ハマス、カイロに代表団派遣 ガザ停戦巡り4日にCI

ワールド

フランスでもガザ反戦デモ拡大、警察が校舎占拠の学生

ビジネス

NY外為市場=ドル/円3週間ぶり安値、米雇用統計受

ビジネス

米国株式市場=急上昇、利下げ観測の強まりで アップ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 7

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 8

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    元ファーストレディの「知っている人」発言...メーガ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中