最新記事

酷暑対策

酷暑が深刻なカタール 屋外にエアコン、青い道路、対策進むが......

2019年10月28日(月)18時20分
松岡由希子

ハリーファ国際スタジアムのエアコンダクト Kirby Lee-USA TODAY Sports Reuters

<酷暑が問題となっているカタールでは、屋外競技場やショッピングモール、市場といった屋外の公共スペースにエアコンを導入する動きが広がっている......>

中東カタールは酷暑が深刻だ。夏には夜間でも気温が32度を下回らず、昼間は48度を超えることもある。そこで近年、酷暑対策として、屋外競技場やショッピングモール、市場といった屋外の公共スペースにエアコンを導入する動きが広がっている。

サッカースタジアムのピッチに冷気を送り込む......

2022年にカタールで開催される「2022 FIFAワールドカップ」の会場として新たに建設された「アル・ワクラ・スタジアム」もそのひとつだ。観客席下から足首の高さに冷気を出して観客が涼をとれるようにし、「下にたまりやすい」という冷気の性質を活用して、この冷たい気流を観客席から芝生のピッチエリアに流れ込ませる。

また、フィールドには、サッカーボール大の通気孔が設けられ、冷気をさらに送り込む仕組みだ。カタール大学サウド・ガニ准教授は「観客や選手のみに冷気を届ける」という発想からこのシステムを考案したという。

また、首都ドーハには、青い反射塗料を塗った道路も登場している。

Why Have Qatar Roads Turned blue? | Indiatimes

地面の通気口から冷気を吹き出すショッピングモール、カターラ・カルチュラル・ヴィレッジ。

Welcome to Katara for world's first air-con outdoor plaza

「エアコンを切ってしまったら、体がうまく動かなくなる」

環境保護主義者でもあるカタールの湾岸研究開発機構(GORD)のユスフ・アルホー会長は、米紙ワシントンポストの取材で、「エアコンを切ってしまったら、とても耐えられない。体がうまく動かなくなる」とコメントし、このようなカタールの酷暑対策に一定の理解を示している。

もちろん酷暑環境による健康被害を防止するうえでエアコンは有効だが、地球温暖化防止とのジレンマは避けられない。カタールでは、エアコンの稼働に必要な電力を化石燃料で発電しているからだ。これにより二酸化炭素が生成され、地球温暖化につながるおそれがある。

カタールも締約国となっているパリ協定では「産業革命前からの地球の平均気温の上昇を2度未満に抑える」ことが定められている。

北極圏を除き、世界で最も急速に温暖化が進んでいる地域

しかし、カタールでは、地球規模での気候変動に加え、ドーハ周辺の建設ラッシュにより、過去30年間で、気温上昇が急速にすすみ、すでに気温が2度以上上昇している。2010年7月の熱波では歴代最高気温50.4度を記録した。

米カリフォルニア州の非営利団体「バークレー・アース」のジーク・ハウスファーザー氏は、米紙ワシントンポストの取材で「カタールは、北極圏を除き、世界で最も急速に温暖化が進んでいる地域だ。カタールの気温上昇は、温室効果ガスの排出量削減に取り組まなければ世界がどのようになってしまうのかを、私たちに示しているようにもみえる」と語っている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米政府、ファーウェイ向け半導体などの製品輸出許可取

ビジネス

米リフト、第2四半期見通し予想上回る 需要好調

ビジネス

米国株式市場=S&Pとダウ小幅続伸、米利下げ期待で

ビジネス

再送NY外為市場=ドル上昇、FRB当局者発言を注視
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 6

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 3

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 4

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 5

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 8

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 9

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 10

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中