最新記事

オーストラリア

路面を溶かす熱波襲来、オーストラリアがまた燃える?

Record-Breaking Heatwave Melts Roads in Parts of Australia

2019年12月23日(月)16時10分
ブレンダン・コール

暑さで道路脇の森林に火が付いた(ニューサウスウェールズ州、12月21日) NSW Rural Fire Service/REUTERS

<深刻な森林火災が続いているオーストラリアで、サウスウェールズ州にも暑さで「発火」しそうな危険が迫っている>

首都シドニーを含むニューサウスウェールズ州で史上最悪の火災を経験しているオーストラリアで、今度は隣りのサウスオーストラリア州に危険が迫っている。路面が溶けるほどの記録的な熱波で、一帯は「かまど」のようだといい、ひとたび山火事が起これば人の手では止めようがないという。

australiamap.jpg

Bruce Jones Design 2009


数日前から猛烈な熱波に襲われているサウスオーストラリアでは、日没後でも暑さは和らがず、最大の都市アデレードでは観測史上最も暑い夜が続いている。19日の夜も気温は34度以下には下がらなかった。日中の最高気温は過去最高の45度に達し、これからさらに暑くなる可能性があるという。

気象当局は、南部の町ナラボーの気温がオーストラリアの観測史上4番目に高い49度に達したと発表。数時間前にオーストラリア西部のユークラで観測されたこの地の過去最高記録を上回った。

<参考記事>アメリカ南西部で52.8℃という猛暑 高齢者など4人死亡
<参考記事>5年前に海洋生態系に甚大な影響を及ぼした「海洋熱波」が再び発生

消防士の手に負えない

ムラト湾沿岸の町セドゥナでは48度と最高記録を達成し、地方当局の報告によれば、内陸のウディナとエアー半島東岸のポートオーガスタでは道路が熱で溶けた。

ポートオーガスタの市議会は「極度の暑さのため、あちこちで路面が溶け出している」と、警告する。

「現在、溶けた部分には砂利をまいて対処している。地元住民以外の通行は危険なので、異常な高温が続く間は別のルートを取るように」

州内の6つの地区で火災危険等級は最高レベルに達している。地元消防機関の幹部アンドリュー・スタークは、ひとたび火災が発生すればあっという間に燃え広がり、手の付けられない状態になると警告する。

「これは消防士にとっても非常に危険な状況だ。財産が失われるばかりでなく、人命が失われる可能性もある」と彼は言う。

「こうした条件下では、火の動きは予測不可能で驚くほど速く燃え広がる。消防士がどれだけ集まっても、火を完全に止めることはできない」

(翻訳:栗原紀子)

2019123120200107issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2019年12月31日/2020年1月7日号(12月24日発売)は「ISSUES 2020」特集。米大統領選トランプ再選の可能性、「見えない」日本外交の処方箋、中国・インド経済の急成長の終焉など、12の論点から無秩序化する世界を読み解く年末の大合併号です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドイツ銀、S&P500年末予想を5500に引き上げ

ビジネス

UAE経済は好調 今年予想上回る4%成長へ IMF

ワールド

ニューカレドニア、空港閉鎖で観光客足止め 仏から警

ワールド

イスラエル、ラファの軍事作戦拡大の意向 国防相が米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『悪は存在しない』のあの20分間

  • 4

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 9

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 9

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 10

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中