最新記事

中国

中国は早くから新型コロナウイルスを知っていたのか?2019年9月26日の「湖北日報」を読み解く

2020年5月17日(日)22時00分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

「MERS」のときのコロナウイルス REUTERS/National Institute for Allergy and Infectious Diseases

テレ朝では昨年秋の湖北日報に新型コロナウイルスという言葉が出ているので中国は早くからその存在を知っていたと解説。全く同時期にアメリカの大学も同ウイルスのシミュレーションをしていたのを知らないのだろう。

2019年9月26日の「湖北日報」

まず、2019年9月26日の「湖北日報」に何と書いてあるのかを見てみよう。

報道のタイトルは「軍事運動会の航空入り口専用通路開通テスト まもなく競技のための機材が入境する密集時期を迎える」とある。

ここで注目すべきワードは「入境」(国境に入る=入国)という2文字だ。

つまり10月18日には武漢で軍事運動会が開催されるので、その運動会に参加するため世界各国から多くの軍人が武漢に来たり競技に必要な機材が「海外から武漢に運び込まれる」という意味での「入境」すなわち「中国という国家の国境に入る=入国する」という大前提の報道であることに注目しなければならない。

問題はこの湖北新聞報道の中で、下に示すように万一にも「一例の新型のコロナウイルス」に感染した人がいた場合の処置法に関して訓練を行ったという表現がある点だ。

endo20200517152001.jpg

テレ朝の番組では某中国問題研究者が出演して「ここに書いてある【新型のコロナウイルス】とは、まさに今流行している新型コロナウイルスのことです!」と断言し「だから中国政府は新型コロナウイルスを去年の9月から知っていた」と主張したのだ。

キャスターが「だから削除したのですね」とそっと聞くと「いや、削除されていません!誰でも見ることができます!」という感じのことを仰って、語気を荒げた。「なんでしょうねぇ・・・」と流れたが、もう一つ問題があった。

キャスターが「(軍事運動会を開催するための訓練なので)海外からウイルスが入り込むのを防ぐためなのでしょうか」という趣旨の質問をしたところ、件(くだん)の中国問題研究者は「誰が海外から入るということを言いましたか?番組の打ち合わせでも、私はそんなことを言っていませんよね!」という趣旨のことを仰って(録音しているわけではないので言葉の細部は不正確)、湖北日報情報のサイトを印刷したものを掲げて「ここには海外から入ってくるウイルスとは書いてないんです!」と断定した。

いやいや、この報道自身、タイトルからして「入境(入国)のための」危機管理訓練なのだ。

それを否定するのは、いくらなんでも無理があろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元カレ「超スター歌手」に激似で「もしや父親は...」と話題に

  • 4

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表.…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 9

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 10

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中