最新記事

地政学

中国を追うアメリカ、さらに日本も参戦...再び動き出した「アフリカ争奪戦」と「再分割」

AN AFRICAN AGENDA

2023年1月6日(金)17時38分
ハワード・フレンチ(フォーリン・ポリシー誌コラムニスト)
中国によるアフリカ支援の現場

12月の在ナイジェリアECOWAS本部ビルの着工式に建設を支援する中国の大使(左端)が笑顔で参加したが AFOLABI SOTUNDEーREUTERS

<この大陸を狙う外国の争奪戦が再び始まった。アフリカ諸国は今こそ団結して前へ進むべきだ>

その昔、欧州の帝国主義列強が集まってアフリカ大陸の分割を協議し、どこをどこの領土とするかを決めた。1884年から翌年まで続いた悪名高い「ベルリン会議」だ。互いの無益な争いを回避するための談合で、もちろんアフリカ人には何の相談もなし。さすがに気がとがめたのか、合意文書には「現地の人々の物質的な豊かさ」と「教育」に力を入れるという文言が盛り込まれた。

だがアフリカ「分割」から第2次大戦終結までの60年間、欧州諸国がアフリカにおける教育の普及に尽くした例は皆無に等しい。現実にはアフリカ人から土地と生業を奪い、鉱物資源を掘り出す強制労働に従事させていた。自国の軍隊に組み込んで、帝国主義戦争の最前線に補給物資を届ける危険で苛酷な任務に就かせることもあった。

卑劣な分割の爪痕として、今も残るのは勝手に引かれた国境線だ。おかげで独立しても海がなく経済的自立の困難な国ができ、もとは一つだった民族集団が引き裂かれた。文化が異なり、反目し合う民族が同じ国に押し込まれることもあった。そして「教育」だの「豊かさ」だのの約束は、ほぼ完全に忘れ去られた。

そして今、新たな「アフリカ分割」が始まったらしい。仕掛けているのは、中国を筆頭にアメリカやフランス、そしてロシア。

さらに、歴史的にはアフリカとほぼ無縁だったのに関心を高め、名乗りを上げた諸国がある。ブラジル、日本、マレーシア、サウジアラビアを筆頭とする湾岸諸国、韓国、トルコ、ベトナムなどだ。人口(つまり安い労働力)の持続的な増加が見込めるアフリカで新たなビジネスチャンスを得たい(そして競合国に先を越されたくない)と考えてのことだ。

今さら説教は聞きたくない

昨年12月にアメリカの首都ワシントンで開かれた米アフリカ首脳会議を見れば分かる。オバマ政権時代の2014年以来の開催で、表向きは開発支援が目的だったが、アメリカの真意は透けて見えた。アフリカに対する影響力で、中国に負けてはいられないという強い決意だ。

しかしアフリカ諸国にも強い決意がある。今さら「中国は信用できない」という説教など聞きたくないし、別などこかの大国が主導する身勝手な連合に引きずり込まれるのもごめんだ――。そういう思いである。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ軍事訓練員派遣の予定ない=軍制服組ト

ビジネス

NY外為市場=ドル小幅高、FRB当局者は利下げに慎

ビジネス

米国株式市場=ナスダック最高値、エヌビディア決算控

ワールド

ICC、ネタニヤフ氏とハマス幹部の逮捕状請求 米な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:スマホ・アプリ健康術
特集:スマホ・アプリ健康術
2024年5月28日号(5/21発売)

健康長寿のカギはスマホとスマートウォッチにあり。アプリで食事・運動・体調を管理する方法

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気を失った...家族が語ったハマスによる「拉致」被害

  • 3

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 7

    ベトナム「植民地解放」70年を鮮やかな民族衣装で祝…

  • 8

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 9

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 10

    「親ロシア派」フィツォ首相の銃撃犯は「親ロシア派…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 7

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    娘が「バイクで連れ去られる」動画を見て、父親は気…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中