コラム

TEDトーク無料化のきっかけになった12年前のプレゼン/in denial(現実から目をそらす)

2017年03月15日(水)11時36分

www.ted.comより


【今週のTED Talk動画】Institutions vs. collaboration
https://www.ted.com/talks/clay_shirky_on_institutions_versus_collaboration

登壇者:クレイ・シャーキー

このTEDトークは2005年のものだが、ここで提起されている課題はつい最近取り組まれ始めたところである。前もって課題提起をしていたこのトークには先見性があったと言える。ニューヨーク大学教授であり、何冊か著作もあるクレイ・シャーキー氏はここで、インターネットのおかげで個人が互いにコミュニケーションをとりやすくなっていることを指摘している。その結果、従来の組織(会社など)が不要になり、その代わりに人はよりルーズな(ゆったりした)ネットワークで協力するようになってきているということだ。

このトークで予測されたことがその後実現できた例として、個人が自分の自動車や住宅を使って儲けられるUberやAirbnbがある。また、科学者たちが長年解決できなかったエイズに関連する酵素の構造は、コンピューターゲームのようなプラットフォームを使った世界中のボランティアが解読に成功した。社会的問題を解決するために、賞金を設定してさまざまな人からアイデアを募るX Prizeもある。これらはクラウドソーシングと呼ばれ、最近注目を集めている。

とても喜ばしいことだが、対する従来の伝統的組織も、時代の流れに合わせて組織をどのように変化させるべきかに取り組んでいかなければならない。2005年の時点でシャーキー氏はその点を指摘していたが、まだ対応を模索している組織が多い。TEDのキュレーターであるクリス・アンダーソンによると、このトークを受けてTEDトークを無料にする決断をしたそう。そういう点からもこのトークを見る価値は大いにあると言える。

【参考記事】ケビン・ケリーが考えるテクノロジーの進化/Figure out(解明する)

キーフレーズ解説

in denial
現実から目をそらす
(動画12:10より)

心理学の用語で、現実を否定することを意味します。その現実は明白な事実として存在するにもかかわらず、それを認めたくない時に起こる現象です。結果として、その現象を無視しようとすることが特徴としてあげられます。シャーキー氏は、多くの組織は現在起きている変化に関してin denialであると言っています。

ここでいくつかこの表現を用いた例を紹介します:

●Even though the signs were clear, she was in denial about her husband cheating on her.
(明らかなサインがあったのに、彼女は夫の不倫から目をそらしていた)

●Even though the doctors told him he had only 6 weeks to live, he is in denial about dying.
(医師から余命6週間だと言われたのに、彼は死ぬという現実を否定している)

●He is in denial that he is an alcoholic.
(彼は自分がアルコール中毒であることを認めたくないようです)

【参考記事】イノベーションは民間企業だけのものではない/God forbid(決してそんなことはないように祈ります)

プロフィール

ロッシェル・カップ

Rochelle Kopp 異文化コミュニケ−ション、グローバル人材育成、そして人事管理を専門とする経営コンサルタント。日本の多国籍企業の海外進出や海外企業の日本拠点をサポートするジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の創立者兼社長。イェ−ル大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営大学院修了(MBA)。『シリコンバレーの英語――スタートアップ天国のしくみ』(IBC出版)、『日本企業の社員は、なぜこんなにもモチベーションが低いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)、『反省しないアメリカ人をあつかう方法34』(アルク)など著書多数。最新刊は『日本企業がシリコンバレーのスピードを身につける方法』(共著、クロスメディア・パブリッシング)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏レミー・コアントロー、1─3月売上高が予想上回る

ビジネス

ドルは156.56円までさらに上昇、日銀総裁会見中

ビジネス

午後3時のドルは一時156.21円、34年ぶり高値

ビジネス

日経平均は反発、日銀現状維持で一段高 連休前に伸び
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 7

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story