最新記事

トルコ

「プーチンにエルドアンの力を無視する余裕はない...」黒海穀物合意は崩壊の危機...ロシアの離脱とトルコの役割

Battle for Turk Support 

2023年7月25日(火)15時50分
デービッド・ブレナン
トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領

トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領 REUTERS/Kacper Pempel TPX IMAGES OF THE DAY

<穀物輸出に関する合意からロシアが離脱、ロシアとウクライナが頼るエルドアンはどう立ち回るのか>

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、トルコとロシアの対決をたき付けているかにみえる。

きっかけは、ウクライナの穀物を黒海経由で安全に輸出するための国際合意「黒海穀物イニシアティブ」が、ロシアの離脱で破綻の危機に瀕したことだ。

ゼレンスキーは、トルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領とアントニオ・グテレス国連事務総長に「公式書簡」を送り、困難な交渉を経て昨年7月に成立した合意を、ロシア抜きで継続するよう要請したと語った。

ウクライナによるクリミア大橋への攻撃などに反発し、ロシアが離脱を宣言したのは7月17日のことだった。

ゼレンスキーはすぐさま声明を出し、「ウクライナと国連とトルコが力を合わせれば、黒海の食糧回廊は存続できる」と、語りかけた。「食糧回廊は世界中の人に必要であり、これを支持する者は全てモロッコから中国、インドネシアからレバノンの広大な地域で人命を救うことになる」

さらにセルギー・ニキフォロフ大統領報道官を通じて、ゼレンスキーはこう述べた。「われわれは恐れてはいない。船を所有する物流企業からも(輸出の継続を求める)話が来ている。ウクライナとトルコにその構えがあるなら、企業は穀物の提供を続けるつもりだ」

一方で、ロシアもトルコに働きかけている。

ロシア外務省によれば、18日にはセルゲイ・ラブロフ外相がトルコのハーカン・フィダン外相と電話で会談。「ウクライナとその西側の擁護者の破壊行為に左右されず、食糧を最も必要とする国々に穀物を提供する」ため、「黒海穀物イニシアティブに代わる枠組み」を提案したという。

本誌が合意に復帰する可能性について尋ねると、ロシア外務省はイニシアティブの結果を「期待外れ」と批判した17日の声明を示した上で、こう付け加えた。

「西側諸国が本当に『黒海穀物イニシアティブ』を尊重するならば、合意の義務を果たし、ロシア産の肥料と食糧に対する制裁の解除を真剣に考えるべきだ。彼らが口先だけの約束だけでなく具体的な成果を見せて初めて、わが国は『取引』の再開を検討する用意ができるだろう」

表向きはウクライナ支持

ウクライナとロシアがトルコのエルドアン大統領の歓心を得ようと競い合うのは、今回が初めてではない。

ロシアのウクライナ侵攻に関して、エルドアンはいわば東西の亀裂にまたがった立場を取っている。仲介役を引き受け、戦略的要衝である黒海の緊張を率先して和らげようとしている。

【20%オフ】GOHHME 電気毛布 掛け敷き兼用【アマゾン タイムセール】

(※画像をクリックしてアマゾンで詳細を見る)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア第1四半期5.4%成長、ウクライナ侵攻で軍需

ワールド

ノルウェー政府系ファンド、シェルに気候変動対策の詳

ワールド

スペインの極右政党ボックス、欧州議会選へ向け大規模

ワールド

イランのライシ大統領と外相が死亡と当局者、ヘリ墜落
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中