コラム

南ア・ブラジル変異株の上陸を阻止せよ! 英「ホテル検疫」破れば禁錮10年と罰金144万円

2021年02月10日(水)12時10分

英中部ダービーのワクチンセンターを視察したジョンソン首相(2月8 日) Phil Noble-REUTERS

[ロンドン発]英政府のワクチン担当ナディム・ザハウィ氏は「世界中に新型コロナウイルスの変異体(バリアント)は約4千ある」と発言した。今のところ注意を要するのは感染力が最大で70%も強い英変異株と、感染やワクチン接種による免疫を回避する南アフリカ変異株とブラジル変異株だ。

70歳以上への接種はほぼ完了

英政府は70歳以上へのワクチン接種をほぼ終了。現在のワクチンを逃れる南ア変異株やブラジル変異株の上陸を防ぐため、15日から、アフリカ南部、南米、ポルトガルなど渡航禁止33カ国からの入国者に3回の検査と指定したホテルで10日間の自己隔離を強制する水際作戦を実施する。

マット・ハンコック英保健相は、嘘をついて「ホテル検疫」を逃れようとした違反者には最大1万ポンド(144万円)の罰金と禁錮10年を科すと表明した。「ホテル検疫」の滞在費用1750ポンド(約25万3千円)は自己負担となる。殺人事件の服役者の約1割は10年以内に出所する。

それだけ南ア・ブラジル変異株の上陸を恐れているということだ。

日本感染症学会によると、変異とは遺伝子の複製過程で一部読み違えや組み換えが発生し、遺伝情報が一部変わる現象だ。多くの「変異"体"」が生まれては消えていく中で、新しい性質を持った子孫を「変異"株"」と呼ぶ。しかし同じウイルスの複製バリエーションにすぎず、ウイルスの名称は変化しない。

「イギリスは変異体を制御する対策を欠いているため、異なる変異体のるつぼになるかもしれない」と発言した英レスター大学のジュリアン・タン名誉准教授(臨床ウイルス学)にコロナウイルスの変異とワクチンについてお伺いした。

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ジュリアン・タン名誉准教授(本人提供)

――当初、専門家の中にも「複製時のミスを修復する校正機能を有するコロナウイルスは2週間に1度変異するだけで、週に1度のペースで変異するインフルエンザウイルスと比較して変異のスピードは遅い。変異をそれほど恐れる必要はない」という指摘がありました

タン名誉准教授「そうした指摘は誤解を招くので、私は無視します」

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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