コラム

コインチェックショックでもビットコインが崩れない理由

2018年01月29日(月)10時08分

東京の仮想通貨取引所コインチェックのオフィス Kim Kyung-Hoon-REUTERS

コインチェックショックがあっても、ビットコインが崩れない理由は何か?

──それは、バブルだからだ。

バブルというのは、何かあるとあっという間に崩れる、あるいは水泡に帰すと思われているが、それは大きな間違いで、バブルであるからこそ、ショックを糧にして、まさに燃料補給として上がっていくのだ。

バブルの上昇局面においては、ネガティブショックは格好の買い場。出遅れた人々がこぞって買い捲る。殺到する。だから、ショックの前以上に上がる。

その理由はバブルだからに過ぎない。あるいはバブルだからこそだ。

バブルである以外に買う理由はないから、買いたい人々が残っているならば、安くなるのは買い意欲をそそるだけ。なぜそれでも買うのか、というのは、彼らは上がるという信念の下、買っているのだから、下がれば買いなのだ。

バブルが崩れるのは、上がるという信念が崩れたときに過ぎず、それは最後の一回だけで、それまで何度もショックを糧に上がる局面を作り、それができるのだ。

さて、今はどうか。

逃げるべき人は逃げている。

残っているのは、迷っている人といまだに信じ続けている人だ。

そして前者は2つのパターンに分かれる。1つのグループは、もう終わりだ、ということは分かっていて売りたいが、どうせなら一度戻した局面で売って逃げたい。買値に近い人々は特に買値に戻ったら売ろうと考えている。だから、過去の上昇局面でもみ合ったところにある場合には、崩れることへの一時的な歯止めとして働く。今はそれに近い面もあるが、これは少数派ではないか。

ナイーブな投資家層も

もう一つのグループは、まだ上がるかな、それとも下がるかな、不安でいっぱいな人々だ。現在の局面はこの人々が多いように観察される。

この結果、乱高下が起こる。

彼らが売りに傾けば一気に下がり、彼らが動かなければ、下がるのをやめ、買う人々の力で上がっていく。

この買う人々というのが、いまだに信じ続けている人々で、彼らも二つのグループに分かれる。

まず、非常にナイーブに仮想通貨に投資している人々で、ネットの情報を頼りにしているような人々で、仮想通貨は未来の通貨、規制は悪い、政府は悪い、起業家はすべて素晴らしい、というようなことをナイーブに信じているような人々だ。彼らは浮遊層でもあるから、崩れたらおろおろするが、現在は、仮想通貨の未来は間違いがない、技術的な革新性は素晴らしい、ネムやコインチェックは例外で、ああいうものがせっかくの仮想通貨の未来を壊す、だから選別して投資することが重要だ、というような議論に踊らされている人々だ。

仮想通貨取引の未来と仮想通貨投機の未来はまったく別なのに。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パリのソルボンヌ大学でガザ抗議活動、警察が排除 キ

ビジネス

日銀が利上げなら「かなり深刻」な景気後退=元IMF

ビジネス

独CPI、4月は2.4%上昇に加速 コア・サービス

ワールド

米英外相、ハマスにガザ停戦案合意呼びかけ 「正しい
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    ナワリヌイ暗殺は「プーチンの命令ではなかった」米…

  • 10

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 8

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story