コラム

世界経済はいったいどうなっているのか

2020年06月29日(月)11時20分

IMFは6月25日の報告書で、日米などの株価は「実体経済と乖離しており割高感がある」と警戒感を示した(写真はニューヨーク証券取引所)Brendan McDermid-REUTERS

<日米中心の国債バブルが世界を覆う。この先、米ドルを支えるには日本が先に破綻するしかないのか>

コロナは関係ない。

コロナは社会問題だ。

社会が壊れると、経済の弱いところから破綻する。これまで、取り繕ってきたところが崩れるだけのことだ。

では、そもそも世界経済はどうなっていたのか。

日本の1990年代とある種の類似性がある。

1997年からのアジア金融危機で、アジアの高成長の奇跡が崩壊した。

これは、日本で言えば1960年代の高度成長が終わり、その後にオイルショックではなく、いきなりバブルが来て、バブルが崩壊したということだ。

そして、BRICsという言葉も多くの人が忘れているかもしれないが、次にBRICsの高度成長期が来た。それは不動産バブルともあいまって、世界的金融バブルを作った。それが2007年から8年に崩壊した。2007年にすでにバブルは崩壊していたのに、決定的になるためには、2008年のリーマンショックを待たなければならなかった。

これは1929年の大暴落から、1930年代の大恐慌までタイムラグがあるのと同じだ。日本の1990年代もそうだが、金融バブルが崩壊しても、実体経済は勢いが残っており(これは良くないことだが、不況の傷を深く大きくする)、すぐには崩壊しない。

リーマンショック後から続くバブル

さて、そこから、世界的な大金融緩和で、このバブルの処理の痛みから逃れ、バブルを作ることによってバブルを延命させた。それが2010年代である。

国債バブルが起き、それが持続しているのが今である。

コロナショックにより、国債バブルは第二波を迎え、第一波よりも遥かに拡張された国債バブルが起きている。

欧州では抑制が効いているから、バブルの中心は、第一波は日本から欧州に伝染したが、第二波は米国がその中心地になった。

ここで国債バブルが崩壊すれば、世界金融システムはもう一度崩壊する。

しかし、持続力が国債バブルの場合はある。なぜなら、政府と中央銀行という少数の主体でリードするバブルであり、バブルを壊したくないインセンティブは普通の投資家よりも強く、また損失を最小化するインセンティブがなく、とことんまでいって、崩壊したら、それは次の政権ということになるからだ。

この中で、世界の生産性低下が起きている。

日本の1990年代、2000年代と同じだ。

新興国は高度成長が終わり、成熟国のバブルが終われば、売り先が自国、輸出ともになくなって停滞する。

成熟国はもともと生産性は低下しており、財政支出と金融緩和に頼っているから、もはや力はない。

世界的に金融、財政バブルで、需要を維持しているだけで、世界的に生産性が低下しているのを覆い隠してきただけだ。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

タイ内閣改造、財務相に前証取会長 外相は辞任

ワールド

中国主席、仏・セルビア・ハンガリー訪問へ 5年ぶり

ビジネス

米エリオット、住友商事に数百億円規模の出資=BBG

ワールド

米上院議員、イスラエルの国際法順守「疑問」
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われた、史上初の「ドッグファイト」動画を米軍が公開

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    目の前の子の「お尻」に...! 真剣なバレエの練習中…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 8

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 9

    美女モデルの人魚姫風「貝殻ドレス」、お腹の部分に…

  • 10

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story