コラム

禁断の「Nワード」発言でもトランプ支持層は揺るがない

2018年08月25日(土)11時00分

2016年の大統領選期間中のトランプとマニゴールド(右) Carlo Allegri-REUTERS

<アフリカ系の元ホワイトハウス高官の「告発」により、トランプの人種差別と政権の迷走は明白だが......>

狭量で意地が悪く、人種差別的で感情の起伏が激しい――いかにもドナルド・トランプらしいツイッターへの書き込みだった。トランプは8月13日、ホワイトハウスの広報担当だったオモロサ・マニゴールトをツイッターでこき下ろした。

「頭がおかしい。(トランプが司会を務めたテレビ番組の)『アプレンティス』で3度もクビになった。今度がついに最後のクビだ。今まで何かを成し遂げたことはないし、今後も一生ないだろう。目に涙をためて雇ってくれと懇願するから、オーケーと言った。でも、ホワイトハウスで嫌われていた。意地が悪く、頭が良くない」

アフリカ系アメリカ人女性のマニゴールトは、『アプレンティス』に出演していた経験の持ち主。16年の大統領選でトランプ陣営に参画し、政権発足後はホワイトハウスの広報部門に職を得た。トランプのホワイトハウスでは唯一のアフリカ系アメリカ人の高官だったが、今年1月に政権を去った。ジョン・ケリー首席補佐官から辞任を求められたとされる。

その時点では、大きな騒動に発展する気配はなかった。しかし、マニゴールトがトランプや政権幹部との会話の録音を公開し、回想録を出版したことにより、トランプは事の重大性に気付き始めた。回想録では、トランプがアフリカ系アメリカ人への重大な差別発言を繰り返していたことが記されている。

トランプは今、自分の本性が全世界に暴露されることに怯えている。大統領選期間中に、過去に女性へのわいせつ行為を自慢した発言の録音が公表されたときの再現になりかねない、と。

ずさんなセキュリティー

今回のスキャンダルには、今のホワイトハウスの全てが凝縮されている。

第1に、トランプはアメリカ大統領を務める準備ができていなかった。04年のプレイボーイ誌のインタビューでは、マニゴールトを嘘つきと呼び、就職のための紹介状を書くつもりもないと酷評していた。しかし、政権が発足すると、そんな人物をホワイトハウスの高官として採用した。

第2に、トランプは人種差別主義者で、スタッフは誰もがそのことを知っていた。トランプが非白人を侮辱する発言をしていることは周知の事実だ。

マニゴールトが公開した録音によれば、大統領選の選挙スタッフの間では、トランプがアフリカ系アメリカ人への侮辱表現である「Nワード」(「N」で始まるいくつかの単語)を使っていたことが暴露された場合の対応も話し合われていた。 

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 9

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 10

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story