最新記事

韓国

韓国3大未解決事件「華城連続殺人」犯人が自白 映画は解決にどこまで迫った?

2019年10月2日(水)19時55分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

華城連続殺人事件の犯人の高校生時代の写真と、事件発生当時に作成されたモンタージュ写真(右) JTBC news / YouTube

<韓国を震撼させた未解決凶悪犯罪──女性14人殺害強姦30件以上の実行犯がついに自白をした。事件を扱った映画は人びとの記憶の風化を留まらせたのか>

2000年から16年間韓国に住んでいた。そして現在アメリカ在住だと言うと、多くの日本人から海外生活は危険ではないのか?という質問を受ける。答えはYESでもありNOでもある。勝手が違う外国では犯罪リスクもあり、アメリカでは生死を伴う銃犯罪もあるが、その分日本にいるときよりも慎重になって予防線を張っており、いつしかそれが日常になっているからだ。

以前、韓国で夜間にタクシーに乗ると、見送ってくれた友人が私の乗ったタクシーのナンバープレートを写真で撮影してくれた。はじめは意味が分からなかったが、タクシーでの犯罪が増えてきているから防犯のためだという。また、ニュースで事件が放送されるたびに友人のお祖母さんが「私が若いころは強盗や恨みなどの殺しが多かったが、最近は意味のない殺人が増えた。あんたも気をつけなさい」と話していたことを今も覚えている。

先日、ある事件の容疑者が特定されたという報道に韓国中が驚き、とりわけ映画ファンは驚愕した。ポン・ジュノ監督作品『殺人の追憶』のモデルとなった華城連続殺人事件の容疑者が、事件発生から実に33年ぶりに特定されたのだ。犯人は、14~71歳の女性ばかり狙い、そのほとんどが性的暴行の後に殺害され、ストッキングで後ろ手に縛られ、下着で口を塞ぐなど残忍な姿で遺棄されていた。

今回、10件の事件のうち、3件の犯行現場に残っていた犯人のものと思われるDNAを最新手法で解析・照合したことで、別の事件で釜山刑務所に収監中だった56歳の男イ・チュンジェを犯人と特定したのだ。この男は、1994年に義妹を性的暴行の末殺害し、現在無期懲役の刑を受けている。

そして11月2日、警察は釜山刑務所で服役中のイ・チュンジェが、華城連続殺人事件を含めて14件の殺人と30件あまりの強姦事件について自白したことを発表した。当初は、犯行を否定していたが、DNA鑑定が一致したことを伝えられると一転して容疑を認めてこう語った。「いつかはこんな日がきて自分のやったことが明らかになると思った」

イ・チュンジェは現在収監され無期懲役の刑を受けているとはいえ、この義妹についての殺人事件でも警察の取り調べでは1度自白したものの、その後「警察の取り調べが厳しく虚偽の自白をした」と主張したことがあり、今回の自白についても虚偽と言い出す可能性もあるという。そして何より残念なことは、自白した犯行についてはすべて2006年に時効が成立してしまっている点だ。今後、どれだけの犯罪を彼が自白しても、その罪を問えないのは悔しい限りである。

韓国では、この華城連続殺人事件を含めて「三大未解決事件」と呼ばれる事件が有名である。残る2つの未解決事件とは、高級住宅地江南エリアの公園で遊んでいた少年の誘拐殺人「イ・ヒョンホくん誘拐事件」。サンショウウオを捕まえに行くと言って山に遊びに行った5人の少年が行方不明となり、その後遺体で発見された「カエル少年事件」である。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

バイデン氏にイスラエルのラファ攻撃阻止要求、身内の

ビジネス

為替、購買力平価と市場実勢の大幅乖離に関心=日銀3

ビジネス

午前の日経平均は小反発、FOMC通過で 介入観測浮

ビジネス

国債買入の調整は時間かけて、能動的な政策手段とせず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 8

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 9

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 10

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中