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中国航海士・笈川幸司

笈川幸司|中国

第3回 杭州の日本人学校は素晴らしい教育をしている

杭州の街並み gyn9038-iStock.

息子が通うのは杭州日本人学校だ。上海や北京と比べると規模は小さく、多いときでも60名。小中9学年合わせて60名だ。北京では両親ともに日本人でなければ子供は入学できないそうだが、杭州の場合、そういう条件はない。

授業はマンツーマンとまでは行かないまでも、少人数制で、息子の場合、3、4年生が同じクラスで授業をするため、さながら田舎の分校のようで、どの授業でも何度も指名され、発表の機会も多いと聞く。

先日、運動会があった。COVID-19の影響で、今回参加する生徒は30名。9学年で30名だ。したがって、どの生徒もほぼ全種目に出場しなければいけない。日本の公立小中学校で行われている行事は、ここでも全て行われるため、準備の大変さも、日本とさほど変わらないだろう。年一度行われる演芸会でも、一人一人に大量のセリフが用意され、誰が主役か本当にわからないほどだ。

世界各地に日本人学校があるが、優秀な教師が選抜され、各地に派遣されているらしく、息子の話を聞き、保護者の話を聞き、先生方と話をしてみると、自分が小中学校時代に受けた教育とは別世界だ。実際、日本でもいまはこれほど素晴らしい教育をしているのだろうか。

杭州市は浙江省の省都。日本でいえば、県庁所在地という位置づけだが、欧州でいえば、一国の首都と言っても良いくらい規模が大きい。また、日本が近いという理由から、興味を持ってくれる人も多く、首都北京と比べようもないほど反日感情は薄い。

地理的な理由から日本からの情報も入りやすいようで、「日本の教育は素晴らしい」と思ってくれている人も多いため、「自分の子供を日本人学校に通わせたい」と考える親御さんも自然と多くなる。杭州日本人学校の場合、日本語がわかり、日本語が話せるお子さんなら入学が認められるそうだ。杭州市の多くのご両親は、「子供がゼロスタートから日本語を学ぶことができるなら、日本人学校に入れたい!」と思ってくれているそうだが、そういった環境がないため、仕方なく、学費が数倍のインターに通わせているという。

ところで、日本の文科省にあたる中国教育部が、今年6月、「両親どちらかが中国人だった場合、子供が外国籍を持っていたとしても、過去四年間のうち、二年間海外にいなかった場合は、留学生制度を使うことができない」と発表した。

理由は、外国人留学生が中国の大学に合格するのは難しくないからだ。例えば、北京大学医学部には日本人留学生も少なくないが、中には、日本の大学に合格できなかったという理由で、北京大学医学部に入学する日本人留学生もいるという。日本のFラン大学に合格できなかった学生が、留学生制度を使って、アジアNo.1の清華大学に合格できたという。

中国教育部は、レベルの高い海外の学生を集めたいという考えがあるようだから、以上のケースは徐々に減少していくだろう。また、「両親どちらかが中国人だった場合、子供が外国籍を持っていたとしても、過去四年間のうち二年間海外にいなかった場合は、留学生制度を使うことができない」というのも、外貨を集めるための留学生制度は、もう必要ないということなのだろう。

 

Profile

著者プロフィール
笈川幸司

1970年埼玉県所沢市生まれ。中国滞在20年目。北京大学・清華大学両校で10年間教鞭をとった後、中国110都市396校で「日本語学習方法」をテーマに講演会を行う(日本語講演マラソン)。現在は浙江省杭州に住み、日本で就職を希望する世界中の大学生や日本語スキル向上を目指す日本語教師向けにオンライン授業を行っている。目指すは「桃李満天下」。

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