コラム

精鋭集団でゾーンに入る、Netflixの究極の企業文化 新刊『No Rules Rules』レビュー

2020年09月25日(金)11時55分

そして超優秀な人材だけの組織のパワーを最大化させるために、互いに批判的なアドバイスを口にできる企業文化を作る。これが2つ目のポイントになる。

相手が上司であっても社長であっても、相手のためになるアドバイスであれば、公の場であってもその場でそれを口にできる文化。Netflixは、その文化を維持するために、いろいろ工夫しているのだという。

大事なのは、アドバイスを言うことが、自分のためではなく、相手のためになっているのかどうか。自分の不満をぶつけたい、というのは自分のための動機だ。そうした動機が少しでも含まれるアドバイスは認められないという。

優秀な人でも、人格的に未熟で、こうしたアドバイスがうまくできない人がいる。たとえその人がどれだけ優秀であったとしても、そうした人には会社を辞めてもらうようにしているという。

超優秀な人材が、超優秀な人材からアドバイスを受け、互いに切磋琢磨して能力を伸ばしていく。その結果、企業全体の能力が劇的に伸びていくのだという。

コロナ禍の中、会社を急いでデジタル化しなければならない。その思いからデジタルトランスメーション(DX)を進める日本企業が増えているが、大事なのはデジタル化ではなく企業文化。社会貢献し業績を上げるには、企業文化をこれからの時代に合わせなければならない。デジタル化はそのためのツールにしか過ぎない。

Netflixの企業文化は、一人一人が自主的に動き、そうした人たちが組織化することで、一人一人の能力をはるかに超えた力を発揮する形になっている。少し前に流行った「ティール組織」という組織形態に通じるものがあるのかもしれない。

日本のビジネス風土や商習慣とは異なるのでNetflixのやり方をそのまま取り入れるのは難しいかもしれないが、目指すべき企業文化の最終形態として参考にできるところは多いかもしれない。

41xwG2q2TvL._SX347_BO1,204,203,200_.jpg日本語版は『No Rules(ノー・ルールズ)』のタイトルで10月22日に発売予定
 リード・ヘイスティングス、エリン・メイヤー
 土方 奈美 訳
 日本経済新聞出版

(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

プロフィール

湯川鶴章

AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。2017年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(2015年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(2007年)、『ネットは新聞を殺すのか』(2003年)などがある。趣味はヨガと瞑想。妻が美人なのが自慢。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高

ワールド

イスラエルとの貿易全面停止、トルコ ガザの人道状況

ワールド

アングル:1ドルショップに光と陰、犯罪化回避へ米で

ビジネス

日本製鉄、USスチール買収予定時期を変更 米司法省
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story